〈坂本美雨さんの子育て日記〉29・芽吹きの力…あっという間に入園

(2019年4月12日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる

坂本美雨さんの子育て日記

20190412坂本美雨さん〈坂本美雨さんの子育て日記

目をつむって片足立ちに挑戦。家族の肖像

「新しい季節には力が必要」 歳のせい?で実感

 芽吹きの季節は、ワクワクするものであった。陽(ひ)が長くなったねと春の兆しを感じ、梅の花が咲き終えると、ぷっくりと膨れた桜の指先に期待が高まる。今年も柔らかい日差しに目を細めて全てがうまくいくような気持ちになったことも日によってあったが、いつもとは違う春を経験している。

 思えば3月には、近しい人が体調を崩したり、ペットが亡くなった報告が相次いだりして、春の前ってそういうことが多いよね、と話すことも多かった。新しい季節に踏み出すには力がいるのだ。そのことを実感し始めたのは、歳(とし)を重ねたからだろうか? 自分の生命力にグッとエンジンをかけなくてはいけない、そんな感覚がある。しかしそれが難しい場合もある。わたしは風邪をこじらせてずいぶんと家にこもることになった。心身共に、ゆっくりと過ごす時なのだと思う。

卒業、入学、進級…子にもすごいことを強いている

 そうすると、植物の芽吹きも違って見えてくる。今までは暖かさにつられてふわっと花開いていくような気楽なイメージだったが、もしかしたら最後の踏ん張りにぎゅっとものすごいエネルギーを使っているのかもしれない。グッと腹に力をためてポンッ!と爆発させる、そんなパワーを使って咲いてるのかもしれないと思うと、一輪一輪が尊い。踏ん張り咲き、ありがとう、と勝手に励まされていた。

 と、子育て日記のテーマから離れてしまったが、子どもの成長もきっとそうなのだ。卒業、入学、進級などで子どもたちの環境は春にガラリと変化する。小さい時から当たり前だと思っていたが、娘がそれをやっていくと考えると、すごいことを強いているなと思う。3月末まで慣れ親しんだ友達や先生と過ごし、次の週からはもう全く新しい環境に囲まれる。体調や心の調子が狂っても当たり前だと思う。

心と時間の余裕をつくり、娘を見つめてみたい

 娘も入園した。本当にあっという間にここまできてしまった。生後2カ月から仕事に連れ回していて場所見知り人見知りがほとんどない順応力の高さと、園の楽しげな環境のおかげで素早くなじみ、とりあえずはホッとしている。が、きっと小さな不安やストレスが日常の中にあるだろう。それが出てきた時に寄り添えるだろうか。彼女がわたしのことを普段から本当によく見ているのと同じくらい、わたしは彼女のことを見ているだろうか。この春、心と時間の余裕を作り、彼女のことをもっと見つめてみたいと思う。(ミュージシャン)

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