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〈坂本美雨さんの子育て日記〉23・旅は楽しいね。

  (2018年8月17日付 東京新聞朝刊)

坂本美雨さんの子育て日記

旅先にて、温泉後のソフトクリーム!

並んで見あげた花火

 この夏、山梨に2日間娘を連れてロケに行った次の日、そのまま2人で長岡の花火大会に行った。彼女を産んで数日後、病院でネット中継を見ていた大きな花火。画面の花火は遠くて異次元のようで、というよりも、自分自身が異次元に来てしまったような感覚だった。生まれたての赤ちゃんと、閉ざされた空気の中で2人きり、これから2人で世界に出て行くんだという不安。そして私もこれからもう1度生まれるんだと思った。今は遠くに思える、こんなに美しいものが私たちが生きていく世界にあるといいね、と祈るように思った。

 その花火を今年、3歳になったばかりの娘と一緒に河川敷に座って並んで見あげた。あっという間の3年間を振り返って泣いてしまうんじゃないかと思ったけれど、思い出に浸る余裕もないくらい、圧倒的に鮮やかな空だった。娘は、飛び跳ね、虹色にチカチカ光る小さなうちわを振り回したり、誕生日にもらった子ども用のカメラで花火を撮ったりしていた。感傷的になる暇なんかなく、ずっと先を不安がることもなく、子どもはその瞬間を全身で受け取っている。そのことにいつも救われる。

最高の相棒

 娘との旅は楽しい。離れた土地に住む会いたい人に会って、時間も決めずに電車に乗って、好きな町で降りて、その土地の温泉か銭湯に入りたい。娘を連れて地方ライブに行ったり、ライブがなくても旅をしたりすると、人見知りも場所見知りもなくすぐに溶け込み、この子は最高の相棒だなと思う。電車の中で繰り返し通路をダッシュしたり、どこでも靴を脱ぎ捨てはだしで走り回ったり(これは私もいまだにそうだから、とがめられないのだが…)、駅のホームでゴロゴロ転げまわったりして思わず白眼になる時もあるけれど。

 仕事で娘と離れていて数時間ぶりに迎えに行くと、よく「これからどこ行くの?」と言う。その時いつも、このまま新幹線でも乗ってしまいたい願望をぐっと抑え、「今日はうちに帰るよ」と電動自転車に乗り、公園に寄り道する。自分に実家と呼べる場所がもうないからか、根を張らない心地よさの中毒になっているような気がする。本当はこうして暮らしていきたいのだけど、娘にとってはそれではいけないような気もする。当たり前に帰れる実家や、故郷の風景や匂いを連れて好きな所に行ってほしい。そんな場所をいつか作ってあげられるだろうか。(ミュージシャン)