幼保無償化始まったけれど…大幅に増えた手続き 園の事務職員から悲鳴 「せめて準備に1年あれば」

村上一樹 (2019年11月5日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる
 10月から始まった幼児教育・保育の無償化で、子育て世代の負担は軽くなる一方で、無償化にかかる手続きに追われる園の事務職員の業務が増している。現場からは「事務、経理処理が増えて、すごく忙しい」と悲鳴が上がる。幼保無償化で、事務職員にしわ寄せが及んでいる。

給食費や延長保育料…家庭ごとに対応

 「幼保無償化で事務仕事が大幅に増えた。力が及ばず体調を崩しかけて、9月いっぱいで園を退職した」。埼玉県内の学校法人が運営する保育施設で事務職員として働いていた30代女性は、そう打ち明けた。

 女性は保育施設で、300人以上の園児の事務処理を1人で担っていた。それだけでも大きな負担だったが、幼保無償化で事務量が増えた。

 幼保無償化は、全ての3~5歳児と低所得世帯の0~2歳児が対象だが、給食費や延長保育料などは自己負担。女性は、給食費や延長保育料の書類や契約書を改めて各家庭に向けて作成し、保護者の署名などを得なければならなかった。世帯の年収要件などに応じて食費のうちおかず代が免除されるため、家庭ごとに細かな作業が必要だった。

 園側に増員を求めたが、保育士や幼稚園教諭も人手不足で確保に人件費もかさむ中「事務職員の増員まで予算を回せない」と言われたという。保育士や幼稚園教諭の人数は、国が児童数に応じた配置基準を定めているのに対し、事務職員には定めが無い。女性は「事務職員にも配置基準が必要ではないか」と語る。

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事務職員増やしてもまかなえない園も

 幼保無償化は、消費税増税による税収増を財源に、増税と同時に10月から開始。だが自治体や各園に、幼保無償化の詳細な制度の通知があったのは4月になってから。女性は「導入が急すぎた。せめて準備に1年かけていたら」と振り返る。仕事が追いつかず体調を崩しかけて退職を決意。「子どもはかわいいし、こんなことが無かったらもっと働いていたかった」と無念そうに話す。

 現在は体調も回復し、新たな仕事を探す予定だ。「無償化に反対ではないし、待機児童対策で保育所を増やすのも賛成だ。ただ、働く職員のことも考えてほしい」と訴える。

 保護者らでつくる市民団体「みらい子育て全国ネットワーク」の天野妙代表は「幼保無償化による事務手続きが大変で、事務職員を増員してもまかなえず、幼稚園では教諭自らが事務処理に入っているケースもある」と、各地で同様の問題が起きていると指摘。「保護者から事務職員への問い合わせも多い。給食費の請求などの手続きはこれから行われていくため、今後さらに業務が増える可能性もある」と危惧している。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2019年11月5日

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