災害時にも期待される保育士の役割 子どもの心を読み取り、日常取り戻す支援を

長田真由美 (2021年3月11日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる
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岩手県陸前高田市第一中学校が子どものための遊戯室として割り当てた音楽室で、小学校の先生が届けてくれた宿題をする子どもたち=2011年3月21日

 災害時、幼い子どもは困っていることを言葉でうまく表現できず、周囲も気付きにくい。我慢をしてストレスをためる子もいる。子どもの心を守るためには、生活を少しでも普段に近づけることが大切なようだ。専門家は、日頃から子どもたちと多くの時間を過ごす保育士の役割に注目している。 

「子どもは優先されない、と悲しかった」

 東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県名取市の閖上(ゆりあげ)地区。漁港から260メートルの場所にあった閖上保育所も津波で全壊したが、園内にいた1~6歳の園児54人は職員の車に分乗して2キロ離れた小学校へ逃げ、全員が無事だった。

 だが、小学校では情報が入らず、食料や飲み物が配られることも知らされなかった。当時の所長、佐竹悦子さん(69)は、残っていたジュース7本とパン7個を確保して園児に分けた。「誰が悪いわけでもないけれど、子どもは優先されないんだと、ただただ悲しかった」と振り返る。

 それでも、夜が明けるまで、泣く園児はいなかった。「保育士の力に助けられた」と佐竹さん。保育士たちは避難先の教室で、普段の保育所と同じように園児と一緒に絵を描き、手遊びをした。笑顔で「大丈夫だよ」と言いながら。佐竹さんは「子どもは大人以上に環境の変化に慣れにくい。日常に近づけるように周囲が努めて」と呼び掛ける。

避難所でも子どもが遊び、勉強できるスペースを

 防災の啓発活動などに取り組む「こども女性ネット東海」(名古屋市)代表理事の藤岡喜美子さん(66)も「必要なのは、いつもの暮らし」と強調。2016年の熊本地震では、被災した7つの保育園に4カ月間、熊本県内外からベテラン保育士18人を交代で派遣し、現場の負担を減らした。「保育の専門家なら子どもの表情やしぐさから読み取り、日常を取り戻すための支援ができる」と力を込める。

 「災害時は誰もが食料などの基本的ニーズが満たされていない。子どもは置いてきぼりになりがち」。被災者支援の在り方などを調査、研究するダイバーシティ研究所(大阪市)代表理事の田村太郎さん(49)はこう指摘し、「避難所でも子どもたちが普段通りに遊べたり、勉強したりできるスペースを確保すれば、ストレスを減らせる」と話す。

「見る」「聴く」「つなぐ」 ケアは3本柱で

 子ども支援専門の国際非政府組織(NGO)「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」(東京)は、誰でもできる緊急時の子どもの心のケア「子どものための心理的応急処置(PFA)」の普及を進めている。

 対応の基本は「見る」「聴く」「つなぐ」の3本柱。まず周囲の状況や子どもの状態を意識的に見る。支援が必要な子どもに寄り添い、相手が話し始めたら耳を傾ける。衣食住や医療などのニーズがあったら必要な情報を提供したり、専門家などにつないだりする。

 子どもは発達の段階によってニーズが異なり、年齢に応じた接し方も必要だ。同NGOスタッフの赤坂美幸さん(45)は「支援を必要としない人には無理にしないことが重要」と話す。

 詳しい内容はNGOのウェブサイト=「子どものためのPFA」で紹介されている。

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