30代後半からの「おしゃれ更年期」 スタイリスト大草直子さんが指南 形×色×素材、こうしてステップアップ

(2020年3月4日付 東京新聞朝刊に一部加筆)
子育て世代がつながる
 「何を着ても前のように似合わない」「何を着たらいいのか分からない」。30代後半になると、こう感じ始める女性が多いといいます。スタイリストの大草直子さん(47)は、この時期を「おしゃれ更年期」と名付け、新しい着こなしを見つけるチャンスと提案しています。子育て中の女性にとっては、日々の慌ただしさに追われ、ゆっくりと自分のおしゃれと向き合えない時期でもあります。体形、肌の色、髪のつや、そして生活…。自分も環境もめまぐるしく変わる時期の装い方のヒントを聞きました。
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スタイリストの大草直子さん

服を決めるのに時間がかかるようなら…「おしゃれ更年期」かも

 Q おしゃれ更年期というのは、どういう状態のことを指すのでしょうか。

 A 女性は30代半ばを過ぎると、体の輪郭が丸みを帯びる、顔色がくすむ、髪のつやが失われる、といった変化が表れ始めます。こうした変化に伴い、似合う服の形や色も徐々に変わっていきます。でも、少しずつ積もるほこりと一緒で、そこにあるのになかなか気づけない。ある朝突然、自分の見た目の変化にがくぜんとするんです。

 着る物を決めるのに時間がかかる。何を着てもあか抜けないような気がする。おしゃれの不調が続くと、落ち込んだり自信をなくしたりする人もいます。それを私は「おしゃれ更年期」と呼んでいます。

ベーシックな着こなしのこつを紹介する近著「大草直子のNEW BASIC STYLE」

 Q おしゃれ更年期を、どのように受け止めればよいのでしょうか。

 A 洋服はラッピングと同じです。中身の形が変わっているのに、ラッピングの形が同じではダメです。今までのワードローブは見直さなきゃいけないし、変えるものは変えないと。だって包むべき形が変わったんだから。だけど、その乗り切り方を誰も教えてくれないから、戸惑うんですよね。

 ただ、もともと女性は変わっていく性。思春期に胸が大きくなったり、妊娠するとおなかが大きくなったり、出産するとしぼんだりを経験してきていて、変化を受容できる性ではあるんです。体の更年期と同じで、おしゃれ更年期も変化によって起こるものだし、トンネルみたいなもので、必ず抜けるものです。

 大事なのは、一つの波である、とまず捉えること。そして、自分がきちんと進化して、一つ上のステージに変わったんだということを客観的に認めること。自分が変わるチャンス、新しいおしゃれに出合うチャンスだと思った方がいい。でも、最初は落ち込む。そういう自分の気持ちにも素直になっていいと思います。

今まで似合わなかったものが、とびきり似合うようになることも

 Q おしゃれ更年期には、どんな着こなしを心がけたらよいのでしょうか。

 A 形と色を見直すことが大事です。おしゃれ更年期は、捨てるものもできるけれど、とびきり似合うものが出てくるタイミングでもあります。若い女性よりも、成熟した女性の体の方が似合うアイテムがあります。

 まずは形。丸みを帯びた輪郭には、角張った形を合わせると美しく見えます。襟のあるシャツやジャケット、台形スカートは代表例です。逆に、体の丸みを拾いすぎるぴったりとしたシルエットや、ゆったりすぎる形は似合わなくなっていきます。

 膝回りも丸くなるため、スカート丈は膝の見える丈より、ふくらはぎや足首まで丈がある方がすっきりと着られるようになります。

 色も同じです。くすみやシミが現れ、「墨っぽく」なった肌には、黒がなじみます。「ベージュや淡いグレーが似合わなくなった」と感じるかもしれませんが、「代わりに、黒というプレゼントが降ってきた」と思えばいいんです。同じ黒でも、りんとした麻、つやのあるシルク、毛足の長いモヘアなど素材の違いでニュアンスは変わります。似合う形や色の幅は狭まりますが、その分、素材の変化で奥行きを広げていきましょう。

大事なのは、鏡で全身を見ること、人に写真を撮ってもらうこと

 Q ダメなものもあるけれど、逆に似合うものが出てくるというのは面白いですね。大草さんが日々、心がけていることはありますか。

 A 鏡で全身をチェックするようにしています。お風呂上がりと朝のタイミングでは必ず見ています。ショックを受けるかもしれないけれど、できるだけ自分の体に敏感になった方がいいですし、裸の姿もチェックした方がいいです。

 女性の体は同じ月の中でも変化します。会食が続いて体のラインがちょっと緩くなってきたら角のあるシャツを着たり、逆に少し肉が落ちてきたらゆったりしたニットを着たりというように、体形に合わせて調節するとよいと思います。

 人に自分の写真を撮ってもらう、ということも日々しています。「撮るよ」と声をかけてもらわずに、スマホを渡しておいて、不意の瞬間を撮ってもらうようにしています。後ろ姿や横姿を撮ってもらうのがおすすめです。人は鏡の前では構えるものなので、他の誰かに撮ってもらった写真は、自分が思っているイメージとだいぶ違いますよ。

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 Q 人に撮ってもらう姿は、鏡で見る姿とも違うんですか?

 A 違います。鏡に映る時って、自分で自分のいいとことしか映さないようにしようとするから。人に撮ってもらった姿は、自分のイメージとは何かが違うかもしれないし、同じかもしれない。合っているかズレているかを確認できます。女の人は、脳内で28歳の自分を思い浮かべると言われています。10年たって38歳にもなると、そのギャップは当然出てきます。自分の姿が頭の中で思い描いていた姿とどう違うかを把握できます。着ている服のサイズが合っているのか、色が似合っているのか、髪の量と全身のバランスはちょうどよいか。髪の分量をもうちょっと減らした方がよかったな、とか、ヘアスタイルに至るまで分かってきます。怖いけれど、絶対やった方がいいと思います。

子どもが小さいと、できるおしゃれは限られる。でも…!

 Q 子どもが小さいと、できるおしゃれが限られます。大草さんも今、3児の子育て中と聞きました。子育てとおしゃれのバランスはどのように取ってきたのですか。

 A 30代って結構つらいんですよね。子どもも小さかったり、働いている方は肩書が付いて立場が変わってきたりということもあるし、自分という中身も変わってくるし、めまぐるしく変わります。変化の連続についていけない時期ですよね。

 8年前、39歳の時に私服を紹介する本(「大草直子のStyling Book」、ワニブックス)を出した時は、末っ子はまだ赤ちゃんで、上は5歳と10歳。子育て期真っ盛りでした。今は、一番下が9歳。一番上は大学生なのでだいぶ落ち着きましたが、当時は本当に大変でした。ほとんど毎日、デニムかワンピース。アイロンをかける時間もなければ、コーディネートする時間もなかったので…。だから、この時にデニムとワンピースのおしゃれはすごく上手になったと思います。その時期を経て、今また違うステージにいます。

 Q これから、さらにおしゃれが楽しくなることもある、ということでしょうか。

 A 子育て中はできるおしゃれが限られるかもしれないけれど、子どもがもうちょっと大きくなったらファッションにかけられるお金がまた少し変わってくるかもしれないし、時間ができて体をメンテナンスできるようになったら、選べる服が変わってくるかもしれない。見える景色って、そのステージごとに変わってくるので、絶対、また楽しくなるはずです。

 人生100年と言われる時代です。今までの服が似合わないからと、40歳前後でおしゃれを諦めてしまうのはもったいない。おしゃれ更年期は、これまでの自分とは違ったファッションを楽しめるチャンスです。その面白さに気づけたら、年を重ねるのが怖くなくなります。おしゃれ更年期は何度もくるかもしれない。そのたびに、工夫して新しい着こなしを探っていくことを楽しんでください。

デニム、パステルカラー… 似合わなくなったアイテム、どうしたらいい?

 おしゃれ更年期の女性たちに多いのが「デニムやパステルカラーが似合わなくなった」という悩み。具体的な解決法を教わりました。

  デニムがきれいにはけなくなりました。

 A おしりの形の変化の影響が大きいので、ヒップラインが下がってくるのをカバーする形を選んでシャープに見せます。子育て中で、しゃがんだり、自転車に乗ったり、赤ちゃんを抱っこしたりという時期は、ヒップ周りにゆとりのあるものをはいていることが多いと思います。ただ、全体に太めのボーイフレンドデニムは、若いおしりではくのは格好いいのですが、成熟したおしりではくと、少しやぼったく見えます。逆に、ぴったりしたスキニーはおしりが大きく見えたり、ウエストの肉が乗ってしまったりします。丸くなってくる膝の形も出てしまう。それを長い服で隠すくらいだったら、デニムの形を変えた方がいいです。太ももはゆったりして、足首に向かって細くなるテーパードの形を選び、くるぶしの骨が見える丈にするとすっきり見えます。

デニムは、太ももに余裕があり、足首に向かって細くなるテーパードの形がおすすめ。くるぶしの骨を見せるとすっきり見える

 Q 茶色が以前のようには似合わなくなりました

 A 肌がくすんでくると、以前は似合っていた焦げ茶色が苦手になることも。赤みを帯びた茶色なら血色よく見えます。その上で、首元や手首、靴など、端っこに白を取り入れて輪郭を明るくすると、反射効果でくすみを払ってくれます。白を配する技は、黒や紺、濃いカーキの装いにも応用できます。白の代わりに、シルバーや淡いブルーも使えます。

赤みがかったブラウンを選ぶと、血色がよく見える。首元や足元など、端っこに白を配すると反射効果でくすみを払ってくれる

 Q 黒のリブタートルネックを着ても、しっくりこなくなりました。

 A この服は、女優のオードリー・ヘプバーンのように、首が長くて、胸板が薄くて、肩先がとがっているような人は、すごくよく似合う。でも、肩先が丸くなり、首やあごにも鋭さがなくなってくると、フィットするリブは体の線を拾いすぎて丸さをより強調してしまいます。平編みで、肌が透けるような薄手のものを選ぶと、顔色と黒がなじみやすくなります。

黒野タートルネックは、薄手の平編みのものを選ぶと顔色となじみやすくなる

 Q パステルカラーが似合わなくなりました。

 A くすんできた顔色とは相性が悪いので、パンツやスカートなど、下半身に取り入れるのが正解です。顔の近くに持ってくる場合は、グレーがかった色味を選ぶとなじみやすくなります。

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パステルカラーは下半身に取り入れるのがおすすめ

おおくさ・なおこ

スタイリストの大草直子さん

 1972年、東京都生まれ。婦人画報社(現・ハースト婦人画報社)でファッション誌「ヴァンテーヌ」(現在休刊)の編集に携わった後、独立。2015年から、40代以上の女性向けウェブマガジン「ミモレ」編集長を経て、現在はミモレのコンセプトディレクター。ウェブサイト「アマーク」主宰。近著に「大草直子のNEW BASIC STYLE」(三笠書房)。プライベートでは、ベネズエラ人の夫と、3児を子育て中。

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