「同意」って? 子どもに伝えたい「自分を守り、相手を傷つけない考え方」を学べる絵本

出田阿生 (2020年12月7日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる

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 互いの意思を確認し合い、気持ち良い関係を築く。それが「同意」という考え方。暴力やいじめから自分を守り、相手も傷つけない-。そんなコミュニケーションの基本が学べる米国の絵本『子どもを守る言葉「同意」って何?』(集英社・1760円)が翻訳出版された。児童書だが、「人間関係のモヤモヤが晴れた」と大人にも共感が広がっている。 

「だいじょうぶ」と「イヤ」の間には、見えない線がある

 登場するのは、まあるい顔のキャラクター。米国人アーティストのレイチェル・ブライアンさんが「わが子に教えたい」と絵と文章で明快につづった。実は彼女は、英国の警察がレイプ防止キャンペーンで使った動画「お茶と同意」の共同制作者。「レイプ=同意のない性行為」を説明するのに「紅茶を欲しくない人に、無理やり飲ませるのと同じ」とたとえた。世界中で「分かりやすい」と25の言語に翻訳され、閲覧数は1億5000万回を超えた。

 日本語訳は、児童文学の翻訳で知られる中井はるのさんが担当した。中井さんは翻訳中、「日本には同意の概念があまりないと気付かされた。驚きと気付きの連続でした」と語る。

 この本は、「キミのからだはキミのものなんだ!」と伝えることから始まる。「イヤなことはイヤと言っていい」と自覚するには、まず自分の快・不快の感覚を認識することが必要だからだ。さらに「キミが『だいじょうぶだ』と思うことと、『これはイヤだ』と思うことの間を分ける、見えない線」がある、とバウンダリー(自他の境界線)の概念を易しく解説する。

上下関係で言わせる「イエス」、外見で同意を推測…はダメ

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いずれも『子どもを守る言葉「同意」って何?』より

 同意には対等な関係も必要だ。「チーズをよこせ」とクマにすごまれるネズミのように、相手との上下関係があって「イエス」と言わされることだってある。「水着を着てるけど、泳ぎたいわけじゃない」というイラストからは、外見で同意を推測するのもダメだと分かる。

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 さらにこの本では、自分と相手の感覚は違うのだから、まず相手の意思を確認して尊重しよう、誰かがつらい思いをしていたら手を差し伸べよう-と呼び掛ける。

制作の背景に性暴力根絶の願い「意思を確認し合う社会に」

 絵本制作の背景には、#Me Too運動の世界的な広がりに象徴される性暴力根絶の願いがある。海外では「同意のない性行為」自体を犯罪とする国が増えているが、日本は被害者に圧倒的に不利な刑法がようやく見直され始めたばかりだ。

 家族や知人であっても、暴力の加害者になることはある。この本では、たとえ「いい人」に見えた大人にだまされたとしても「キミはわるくない!」と断言する。中井さんは「この本に書いてある言葉が読んだ人の心にひとつでも残ったら、人生の助けになるかもしれない」と望みを託す。

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 「嫌よ嫌よも好きのうち」のような都合の良い解釈で「同意」を推測する文化はまだ根強いが、「多様な人が存在するのだから、相手と意思を確認し合うことが常識である社会に変えていきたい」と中井さん。読者からは「嫌なことを断る勇気が持てた」という感想が寄せられているという。「性暴力に限らず家族や友人、同僚との関係にも応用できる。子どもからお年寄りまで読んでほしいです」

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年12月7日

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