広がる「体験格差」 低所得世帯の児童3人に1人が習い事や旅行の機会なし 支援団体「将来の職業や所得に影響する」

榎本哲也 (2022年12月16日付 東京新聞朝刊)
 年収300万円未満の低所得世帯の小学生のうち3人に1人がこの1年、習い事や旅行などの体験活動を何もしていないことが、子ども支援団体が15日に公表した調査で分かった。団体は「『体験の貧困』は将来の職業選択、所得にも影響を及ぼす」として国に対策を求める。

「経済的余裕がない」最多の56.3%

 調査したのは公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン(CFC、東京都墨田区)。生活困窮家庭の子どもに学びや体験の機会を保障する活動をしている。

 調査は10月、小学生の子どもがいる全国の保護者2097人にインターネットで実施。スポーツや音楽など定期的な習い事、旅行や動物園など単発での体験の有無を聞いた。「体験格差」に焦点を当てた調査は例がないという。今回は中間報告で、最終報告を来年4月以降にまとめる。

 1年間、子どもが体験活動を「何もしていない」と答えた保護者は、(1)年収300万円未満の世帯が29.9%、(2)300万~600万円未満の世帯が20.2%、(3)600万円以上の世帯が11.3%。3倍近い「体験格差」があった。

表 子どもの「体験格差」

 体験させられなかった理由を複数回答で聞くと、(1)は「経済的余裕がない」の56.3%が最多。(2)(3)は「送迎、付き添いなどの時間的余裕がない」が48.1%、47.0%で最多だった。

 物価高騰が子どもの体験機会に影響したか、との質問に「機会が減った」「今後減る可能性がある」と答えた保護者は(1)50.6%(2)47.2%(3)34.7%-と大きな差があった。

国に学校外の体験の場づくりを求める

 保護者自身が小学校時代に習い事などをしていたかを聞いたところ、「何もしていなかった」が(1)39.8%(2)31.1%(3)23.2%。経済状況が厳しい保護者ほど、自身も幼少期の体験機会が少なかった。

 CFC代表理事の今井悠介さん(36)は「国の対策では、学校外での体験活動は後回しにされがちだが、個性や強みの発見、自信や意欲の育み、学力の土台となる。『体験の貧困』は格差の固定化につながり社会経済的損失も大きい」と指摘。国に公費の投入、無償や安価で参加できる体験の場づくりなどの施策を求めるという。

子どもにさせてあげられなかった体験

 ※保護者の自由記述。かっこ内は在住地・子どもの学年・保護者の年代性別

  • 経済的に無理で、子供が「無理だよね」と、何も言わなくなった。申し訳なく思う (愛媛県・小4・40代女性)
  • ピアノや絵画教室に行かせたい。コストがかかり、行かせてあげられない (東京都・小4・40代女性)
  • 野球チームに入らせてあげたいが、ひとり親で経済的に道具やユニホームが用意できなかった (神奈川県・小4・50代女性)
  • 離婚し、幼稚園の頃から習っていたピアノをやめた。やりたがっていたギターも金銭的に厳しい (愛知県・小6・40代女性)
  • 子供の将来の夢は保育士だったが、ピアノを習わせられなかった。きょうだいはスイミングに通っていたが、転居と転職で経済的に悪化し、小学生の子供は通わせられ なかった (山口県・小4・40代女性)
  • スポーツ系は保護者の当番が必要だが、仕事でできない。ひとり親は金銭、時間的に何もさせられない (鳥取県・小4・40代女性)
  • 海やプール、釣り、キャンプ、スキーなど経験させてあげられなかった。家庭状況、経済面などが理由 (兵庫県・小5・30代女性)
  • ダンスを習いたいと言っていたが、経済的に厳しかった (大阪府・小4・30代女性)

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2022年12月16日

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