絵本作家・ミロコマチコさんの「みえないりゅう」 奄美大島に移住して感じた「目には見えない自然のうごめき」を描く

(2023年8月12日付 東京新聞朝刊)
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作品の前で笑顔を見せる絵本作家のミロコマチコさん=東京都杉並区で

 東京から奄美大島(鹿児島県)に移り住んだ絵本作家で画家のミロコマチコさんが7月、移住後初の絵本「みえないりゅう」(ミシマ社)を刊行した。新作で描いたテーマや当地での暮らしについて聞いた。

移住で「描きたいものが変わった」

 新作は鮮やかな色彩の表紙に目を奪われる。ページをめくると、彩り豊かな海や自然の様子が迫ってくる。小さな海で生まれた、目には見えない生き物「りゅう」を描いている。

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ミロコマチコさんの新刊「みえないりゅう」

 これまでは、ゾウやライオンなど実在する動物たちの生命力あふれる姿を描いた作品が多かったミロコさん。4年前、奄美大島に移住したことで「描きたいものが変わった。目に見えない生き物を表現していきたくなった」という。

 「島の人たちは(風や海など)自然の中で、目に見えないもののうごめきを感じ取っていて、『今日は、竜がおったね』などと言うことがあるんです」。最初はつかめない感覚だったが、「感じ取ろうと、島で見えてきたものを描いているうちに、この物語が生まれた。そして、自然そのものこそが竜なんじゃないか、その存在を感じとれれば自分自身も地球の一部になれるんじゃないかと思うようになった」と話す。

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新刊「みえないりゅう」の原画 絵本の一場面

地球が主役 そこに合わせて生きる

 2017年に仕事で初めて奄美大島を訪れ、ほぼ毎月通ううちに、豊かな自然や島の人たちの生き方に魅了されたという。東京で仕事をしていると、昼も夜もなく、コンビニは24時間営業。「人間が主役のように勘違いしてしまう」。だが、奄美大島では日中しか店は開いていない。台風などの自然災害もひんぱんに起こる。「島の人たちは地球が主役と考えていて、そこに合わせて、柔軟に生きている。自然を読む力もある。生きていく上で大切なことで、私もそんなふうになりたいと思った」と移住の経緯を振り返る。

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奄美大島について話をするミロコマチコさん

 移住後、島の人たちから多くのことを学び、助け合って暮らしているというミロコさん。「どちらかというと人と関わらないで生きていきたいと思うタイプだったけど、人と関わることの面白さを教えてもらった」。例えば、家が壊れたら助け合いながら自分たちで直す。「みんなで協力すれば絶対大丈夫という自信がついた」と笑顔を見せる。

ミロコマチコ

 1981年、大阪府枚方市生まれ。デビュー作「オオカミがとぶひ」で第18回日本絵本大賞受賞。「てつぞうはね」で第45回講談社出版文化賞絵本賞を受賞した。

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