〈新年のごあいさつ〉子どものために、と先回りして「今」を見失わないように

 あけましておめでとうございます。

 2019年も東京すくすくの記事を多くの方に読んでいただき、ありがとうございました。新しい年も皆さんの役に立ち、議論につながるような記事をたくさん発信していきたいと思います。

 昨年末、10代のころ読んで夢中になった『クローディアの秘密』(岩波書店)という児童文学が近所の図書館で目にとまり、久しぶりに読みました。しっかり者だけれど、どこかで今とは違う自分になりたい、と考える少女クローディアが、弟と家出を決行。ニューヨークのメトロポリタン美術館に潜んでいるうちに、ある美術品の秘密を解くことに夢中になる物語です。40代の今でも、楽しく読み進めることができましたが、やはりあのころのようには没頭できない気もして、少し寂しく感じました。

 よく話題になることですが、子ども時代と今とを比べて、大きく違うことの一つに、時間の流れのスピードがあると感じます。年を重ねるごとに、1日、1週間、1カ月があっという間に過ぎていくように感じられ、そのペースも加速度的です。

 どうして子どものころは、あんなに1日が長かったんだろう。

 子どもを観察していると、時間の区切りを考えることなく、今目の前にあるものに熱中することの連続だからなんだろうなあ、と感じます。遊びなど毎日、同じことを繰り返しているように見えても、その一瞬、一瞬は二度とないその子だけの時間。そう考えると、とても貴重なものに思えます。

 すくすくの編集を担当していて感じているのは、子どもがまだ幼いうちから、その子の将来についての「正解」を求める大人が多くなっているのではないかということです。習い事はいつごろから、何を始めたらいいのか、中学受験はどうする、英語はいつまでにどのくらいの力を付ければいいのか…。親として考えなくてはならないことがどんどん押し寄せてくる感じです。

 もちろん、子どもの持つ力を引き出したり育てたりして、夢を叶えてほしい、より豊かな人生を歩んでほしい、というのは親や先生方など子どもに関わる大人に共通した当然の気持ちだと思います。けれど、「将来」にばかりに気をとられすぎていると、貴重な子どもの「今」を見逃してしまうのではないかと思うのです。

 かくいう私も、「今しっかりやっておかないと、これから先困るんじゃない?」などとつい、息子たちを追い立てるような言葉を発してしまいがちです。最短のコースや効率の良さを求めて先回りすることは簡単ですが、そうせずに子どもを見守ることは、とても難しい。でも、子どもには子どもの時間の流れがあるし、その年頃だからこそ感じる気持ちや熱中できることがたくさんあります。焦らず、今、目の前にいる息子たちとの時間を大切にする1年にしたい。そして、すくすくでも、そんな視点を大切にして、情報を発信したり、読者の方と交流したりしていけたら、と考えています。

 今年も東京すくすくをどうぞよろしくお願いします。

(東京すくすく編集長)

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