〈親子でぶらり 学べるスポット〉猛暑にあえて「熱帯環境植物館」(東京都板橋区)

小鷲正勝 (2018年8月16日付 東京新聞朝刊)

意外に暑くない! むしろひんやり♪

写真

熱帯環境植物館の植生4ゾーンのうち冷室「雲霧林」では、熱帯山地の環境を再現。夏場に入ればひんやりして気持ちがいい

 猛暑のなか、あえて熱帯を味わうというのは粋ではないか。半ばヤケで訪ねた板橋区立熱帯環境植物館だったが…。
 
 親に連れられた粋な子どもたちがたくさんいる。夏休み特別展「熱帯の昆虫」が開かれているし、地階のミニ水族館も人気だそうだ。熱帯植物を堪能する前に海水、汽水、淡水の各水槽を眺めた。植物が繁茂する巨大ドームの入り口近くに池があり、水族館側からガラス越しに世界最大の淡水エイ「ヒマンチュラチャオプラヤ」がゆっくり動く姿が見える。ドームに足を踏み入れると、意外に暑くない。外気温が35度前後だったから、むしろ心地いいくらいだ。
 
 温室のゾーンは熱帯の河口域を模した「潮間帯植生」から。池の縁にマングローブが生え、ヤシ類が茂る。この周囲に「熱帯低地林」が広がり、ラワン材としてよく輸入され過剰伐採が懸念される木々、大木に巻きついて伸びる「絞め殺し植物」なども。「集落景観」のゾーンにはニッパヤシで屋根を葺いた高床の住居が立ち、熱帯に生きる人々の植物環境を再現する。
 
 最後は冷室の「雲霧林」。「おー、涼しいじゃん!」。扉を開けて入ってくる人たちが思わず声を上げる。雨や霧が多い熱帯山地の環境をつくりだし、ランやシャクナゲ、ウツボカズラなどが生える。ふき出すミストが冷気まで提供している。
 
 この「オアシス」で珍しい樹木にふれ、プルメリアやハイビスカスなどの花々に癒やされる。パパイアやカカオの実に南国へのあこがれがふくらむ。
 
 広田充雄副館長(企画担当)は「子どもたちには植物、生物の多様性をここで実感し、好きになってほしい。自然環境を守る最初のきっかけにしてもらえれば」と願う。

地図

熱帯環境植物館の周辺地図

メモ

 東京都板橋区高島平8の29の2、都営三田線高島平駅から徒歩7分。別名グリーンドームねったいかん。東南アジアの熱帯雨林を4つの植生ゾーン(潮間帯植生・熱帯低地林・集落景観・雲霧林)で再現。地階にミニ水族館を設け、海底から高山帯へと一連の熱帯環境が立体的に見られる。植物は計700種。入館料・大人260円、小中学生・65歳以上130円。ただし夏休み期間(~9月2日)は小中学生無料。開館10~18時。原則月曜休館。03・5920・1131

ひとこと

 植栽担当の元山淳一副館長は「熱帯植物に関するマニュアルは少ない。肥料をやる時期や量、剪定時期など、植物もそれぞれだし、試行錯誤の連続です」と語る。

足を延ばせば…

五本けやき
 板橋区上板橋1の19、東武東上線上板橋駅から徒歩5分。昭和初期の川越街道の拡幅工事にあたり、元上板橋村の村長だった飯島弥十郎が屋敷林の一部だったケヤキを残すことを条件に土地を提供した。こうして5本が川越街道の真ん中に残った。その後2本が枯死したが、植え替えられて5本が並ぶ姿を保ってきた。03・3579・2251
 
薬師の泉
 板橋区小豆沢3の7の20、都営三田線志村坂上駅徒歩5分。大善寺があったころ8代将軍徳川吉宗が立ち寄り、境内に湧く清水を見て寺の薬師像を「清水薬師」と命名。以来「薬師の泉」と親しまれた。その後荒廃した時期を経て1989年、庭園として整備された。入園無料。開園9時~16時半。電話03・3579・2532

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