放課後に外で遊ばない小学生が多数 都市部で8割、農村部でも6割 千葉大大学院の研究室が調査

 平日の放課後に全く外で遊ばない小学生が、都市部で約8割、地方の農村部でも6割に上ることが、千葉大大学院園芸学研究科の木下勇研究室の調査で分かりました。習い事などで忙しい子どもが多いことや、少子化で近所に遊べる友達がいないことなどが背景にあるとみられ、木下教授は「子どもの遊びは危機的な状況。外遊びを促すため、行政や民間が遊ぶ場や機会を設けるなどの社会的介入が必要だ」と話しています。
ドイツで導入されているプレーバスの内外で遊ぶ子どもたち(木下教授提供)

ドイツで導入されているプレーバスの内外で遊ぶ子どもたち(木下教授提供)

遊ぶ友達「誰もいない」 千葉市で14%、みなかみ町で20%

 調査は、2016年10月から18年12月に実施。千葉市と宮城県気仙沼市、群馬県みなかみ町の3市町の小学生計2433人に平日に外で遊ぶ日数を聞きました。

 都市の千葉市では78%が「0日」と回答。高学年では87%に上りました。平日放課後に遊ぶ友達の人数も聞いたところ、「誰もいない」が14%、「1~2人」が55%でした。

 地方都市の宮城県気仙沼市でも、平日放課後に外で遊ぶ日が「0日」の子は76%。平日放課後に遊ぶ友達は「誰もいない」が18%、「1~2人」が29%でした。

 一方、地方の農村部である群馬県みなかみ町では、平日の外遊びが「0日」の子は都市部よりは少ないものの60%いました。遊ぶ友達が「誰もいない」は20%、「1~2人」が42%で、都市部以上に近所に気軽に遊べる友達が少ない状況が浮かびました。

「一緒に遊ぶのはお互いの自宅、オンラインゲーム」の子も

 放課後の「遊び」に対する意識や、遊び自体が変化している様子も見られます。調査に対して、「外に出る理由がない」「なぜ外で遊ばなければならないのか」という声があったほか、お互いに自宅などにいながら、インターネット上のオンラインゲームで遊ぶ約束をして、そのままゲームで一緒に遊ぶ、という子もいたそうです。

 家と家の距離が遠い農村部では、親同士が無料通信アプリ「LINE」で約束し、車で送迎するケースも。調査を担当した研究室の寺田光成さんは「放課後、日常的に、気軽に外遊びすることが当たり前ではなくなっている」と指摘します。

 木下教授は、「外遊びによって、身体はもちろん、好奇心ややる気など内面も発達する」と遊びの必要性を強調。防犯面から子どもだけで遊ばせることをためらう親もいますが、「平日に外遊びができない場合は、小さい子は親が休日に外に連れて行き、時間をかけて遊ぶ必要がある。大きい子はできるだけ子ども同士で外で遊ぶ自由な時間を与えるべきだ」と話します。ただ無理強いはせず、親自身が楽しく体を動かして遊ぶ姿を見せることが大切、とアドバイスしています。

ドイツや英国では移動式遊び場「プレーバス」が活躍

 ドイツや英国などでは、移動式バスに遊び道具や遊びの専門家が乗って子どもの元へ出向く「プレーバス」が各地で導入されています。

 ドイツでは、1970年代に都市化や車の増加などの環境の変化で、子どもの遊びを支援する必要性が増し、移動式の遊び場を作る活動が始まりました。バスなどの車に「プレーワーカー」と呼ばれる遊びの専門家が玩具や体を動かす道具などを持って乗り込み、市街地や郊外、農村部など各地の空き地や公園に出向いて子どもたちが遊ぶ場を設営します。

ドイツで導入されているプレーバス(木下教授提供)

ドイツで導入されているプレーバス(木下教授提供)

 同時に遊び方のアイデアも伝えます。民間団体などが運営し、サーカスや水遊び、昔の遊び、ミュージアムなど特別なテーマのプレーバスもあるそうです。プレーワーカーは、遊びを活性化させ、子どもの学びや成長を支援する専門職として大学などで養成されています。

 日本でも、移動式遊び場の取り組みは徐々に広がっています。NPO法人などが被災地の仮設住宅やイベント会場に、玩具や楽器、絵本などを積んだトラックで出向き、世代を超えて交流できる場を提供しています。

 木下教授は、こうしたプレーバスを例に「子どもたちが熱中して遊べる環境を周囲の大人が用意することが、遊びの活性化や刺激策になるのでは」と提案しています。

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