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〈あべ弘士 子どもがおとなになる間〉vol.4 かっこいい大人の大切さ

   

 動物園の飼育係だったので、よく「動物から多くのことを教わったんでしょう」と言われます。でも、本当にいろいろなことを習ったのはやっぱり人間。少年時代に出会った「かっこいい大人」が、僕にとって大事な存在だったと今も思います。

 僕が育ったのは旭川の街中の長屋が集まった地域。子どもたちがうじゃうじゃいました。僕のじいちゃんは福島県の相馬から、石屋として北海道に入った。次男だった父が石屋を継いでいましたが、親戚のおじさんたちもみんな町内に住んでいて、長男はペンキ屋、三男はブリキ屋、四男は電気屋、結婚した叔母の夫は大工と、みんな職人でした。

 お祭りの露店で「スマートボール」をジーッと観察し、次の日、クギはブリキ屋のおじさんから、板は大工のおじさんからって調達して、まったく同じものを作っちゃったこともあったよ。僕が子どものころから、絵を描いたり、工作したりしていると「あー幸せだな」って思うのは、こんな環境に生まれ育ったことも大きいんじゃないかな。

 今の子どもたちは工作と言っても出来あいのキットを使うことが多いけれど、本当の創造力はゼロから何かを作り出すこと。僕みたいにものを作りたい少年にとってはいい時代だったんだな。

イラスト

 もう一つ、子ども時代で忘れられないのは「あんちゃん」の存在。おじさんたちの職場や、近所のお米屋さん、魚屋さんなどで住み込みで修業するお兄さんたちだ。休みの日は遊びに連れていってもらったりもしたけど、小学生だった僕から見ると、どことなく気配がかっこよくて、大人の匂いがして、不思議な存在でした。

 絵本の文章を書く時、僕はリズムの良さを大切にしています。その原点の一つは、子ども時代に熱中した百人一首。取り札は木のカルタで、本州とは違い下の句をよんで下の句を取るのが北海道流。長い冬の間、町内の会館に子どもたちが集まって特訓に次ぐ特訓をしていました。

 高校3年生まで続けたけれど、そこで鍛えてくれたのは町内のおじさんです。漫画「巨人の星」に出てくる星一徹みたいな厳しいおじさんだった。今、何の役にも立っていないように思える百人一首だけれど、美しい言葉のリズムを習得できたこと、集中力を極限まで高めることができたことは、おじさんのおかげです。

 こんなふうに町の中の大人たちみんなに育ててもらったんだな。怖いおじさんも、ちょっと変わったおじさんも、すてきなおじさんも、親とは違う大人の存在が大事なのは、いつの時代も同じはず。僕もいつでも、そんなかっこいいおじさんでいたいと思っていますよ。

 動物の命を描いた多くの作品を手がけている絵本作家のあべ弘士さんから、子育て中の人たちや子どもにかかわる人たちへのメッセージを月1回、お届けします。