目黒女児虐待死の父親、10/1初公判 加害経験者が伝えたい「虐待の自覚がない親は多い」

小野沢健太 (2019年9月30日付 東京新聞朝刊)
 東京都目黒区で昨年3月、両親から虐待を受けた船戸結愛(ゆあ)ちゃん=当時(5つ)=が死亡した事件で、傷害と保護責任者遺棄致死などの罪で起訴された継父の雄大(ゆうだい)被告(34)の裁判員裁判初公判が10月1日、東京地裁で開かれる。なぜ虐待したのか、法廷での発言が注目される。

元妻・優里被告は懲役8年判決

 元妻の優里(ゆり)被告(27)には今月17日、懲役8年の判決が言い渡された。判決は、雄大被告による心理的DV(ドメスティックバイオレンス)を認める一方、優里被告が「夫の結愛ちゃんへの暴行を容認した」と認定。ただ、雄大被告による虐待行為の実態は明らかになっていない。

 起訴状によると、雄大被告は昨年2月下旬ごろ、結愛ちゃんの顔を多数回殴るなどしてけがをさせたうえ、優里被告と共謀し、結愛ちゃんが極度に衰弱していたのに虐待の発覚を恐れて病院に連れて行かず、3月2日に肺炎による敗血症で死亡させたとされる。

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「痛めつけないと伝わらない」は間違いだった 経験者の告白

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“しつけ”のつもりで手を…母親が警察に通報

 「自分がやったことに向き合ってほしい」。船戸雄大被告の初公判を前に、東海地方の40代男性会社員はこう願う。男性は過去に子どもを虐待し、現在はカウンセリングを受けている。「子どもを痛めつけることの罪深さをしっかりと自覚しなければ、虐待は止められない」と、自分に言い聞かせるように話す。

 男性は今年4月まで両親と長女(10)、長男(8つ)の5人暮らしだったが、今はアパートで1人で生活する。「しつけ」のつもりで子ども2人に手を上げ、見かねた母親が警察に通報、子どもは児童相談所に一時保護された。

よみがえった記憶「父の暴力におびえていた」

 児相は1カ月後に一時保護を解除したが、その際、「一緒に暮らさない」「定期的にカウンセリングを受ける」の2つの条件を付けたという。月2回のカウンセリングで、怒ってしまったときの気持ちを思い出したり、自分の人生を生い立ちから振り返ったりするうちに、自身も幼いころ父親から暴力を振るわれていた記憶がよみがえった。

 「父におびえていた。同じ思いを自分の子どもにさせていたかと思うと、情けなくて…」

「感情のコントロール方法を身に付けたい」

 しつけなのだから痛めつけないと伝わらない。それが思い込みだったと痛感した。「感情のコントロール方法を身に付けて、また子どもと暮らしたい」。危機感を持ってカウンセリングを続ける。

 「私のように自覚なく虐待をしている親も多いと思う」と男性。初公判を控えた雄大被告には「結愛ちゃんに何をしてしまったのか、どんな思いで暴行したのか。法廷で正直に打ち明けることが、他の親の気づきにつながるはずだ」と話した。

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