「子どもの貧困対策大綱」数値目標なし、改善策不足… 「当たり前のこと書くな」と落胆の声

上坂修子 (2019年11月30日付 東京新聞朝刊)
 政府は11月29日、貧困家庭の子どもへの今後5年間の支援方針をまとめた「子どもの貧困対策大綱」を閣議決定した。「全ての子どもたちが夢や希望を持てる社会を目指す」と理念を掲げるが、支援策は既に取り組んでいるものや実施決定済みの内容が並ぶ。具体策に乏しく数値目標もないことに、支援団体や有識者からは落胆の声が漏れる。 

閣議決定 実態把握の指標は増えたけれど

 大綱は、子育てや貧困を家庭のみの責任とせず、子どもを第一に考えると強調。親の妊娠期から子育て期まで、切れ目ない支援を行うとした。貧困の実態把握に、指標を25項目から39項目に増やした。

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 一方で、支援団体などが求める児童手当や、低所得のひとり親世帯に支給される児童扶養手当の増額は盛り込まれなかった。大綱は「支給を着実に実施する」と現状制度の継続を示しただけだった。困窮世帯への経済的支援や学校給食の無償化も明記されなかった。

子どもの貧困率 数値目標は盛り込まれず

 政府の有識者会議のメンバーで、低所得家庭の子どもへの学習支援を進めるNPO法人「キッズドア」(東京都)の渡辺由美子理事長は、パブリックコメント(意見公募)で、子どもの貧困率を改善する数値目標を設けるよう提案したが、受け入れられなかった。

 前回の大綱が策定されて5年。子どもの貧困を巡る状況について、支援団体関係者は「微改善」にとどまっていると語る。

 労働政策研究・研修機構の2018年調査によると、母子世帯の貧困率は51.4%で、16年から4.4ポイント増と悪化した。関東甲信越に暮らし子ども4人を育てるシングルマザーは、平日の製造会社でのフルタイムパート、週末の販売でのアルバイトに加え単発で派遣の仕事をこなす。それでも毎月の家計は赤字だという。

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厚労省「予算が担保できないものは書けない」

 今回の大綱でも、具体的な生活支援策が盛り込まれなかった理由について、厚生労働省子ども家庭局家庭福祉課の担当者は「予算の担保ができていないものは書けない」と財源不足を挙げる。

 首都大学東京の阿部彩(あや)教授(貧困・格差論)は「大綱は、これから5年間の方向性を明示するもの。やって当たり前のことを大綱に書かないでほしい。改善する手段がほとんど入っていない。ひとり親への生活支援が全然足りない。その拡充と、ふたり親世帯の貧困の子どもへの支援は入れてほしかった」と指摘する。

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