ビスケットで体売る少女 紛争で危機に直面する中央アフリカの子どもたち ユニセフ・小川亮子さんに聞く

小嶋麻友美 (2018年12月11日付 東京新聞朝刊)
 国連児童基金(ユニセフ)は11月末、紛争下の中央アフリカで避難民が急増し、子どもたちに危機が切迫しているとの報告書を発表した。2014年から同国に赴任しているユニセフの子どもの保護専門官、小川亮子さん(38)は「紛争は国中に広がり、緊急な対応が必要」と訴える。一時帰国の機会に話を聞いた。 
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中央アフリカの紛争下にいる子どもの窮状を訴えるユニセフの小川亮子さん=東京都港区で

-紛争の現状は。

 2016年の新大統領就任で落ち着いたように見えたが、仏軍や米軍が撤退した後、2017年末からぶり返している。武装勢力同士で戦うだけでなく、村も攻撃され、人々は着の身着のまま逃げている。国内避難民は掘っ立て小屋のような所に大勢で住み、川の水を飲むなど衛生状態はとても悪い。このままでは重度の栄養失調の子どもは2019年に4万3000人に上る見込みだ。

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今年9月、中央アフリカ・バンギの小児病院で、エイズと重度の栄養失調で治療を受ける4歳の男の子((C)ユニセフ/ギルバートソン)

-隣国コンゴ(旧ザイール)で性暴力根絶に取り組む医師ムクウェゲさんが10日、ノーベル平和賞を受賞した。中央アフリカでも数千人の子どもが被害に遭っていると報告されている。

 食糧不足で、ビスケットをもらうためだけに体を売る少女もいる。兵士らの妻として性的に搾取される子も多い。性暴力は自分で言い出しにくく、発覚がすごく難しい。把握されているのは氷山の一角とみられている。子ども兵を巡る問題もある。15年、武装勢力は子ども兵を雇わないことで合意したが、組織が分派するなどして命令系統が機能せず、今も数千人の子どもが兵士として雇われている。2014年以降、解放された1万3000人のうち4分の1は、女の子だった。そうした子どもたちの社会復帰も、ユニセフの支援の柱の1つ。地域に戻るだけでなく、職業訓練まで見据えた支援が必要で、長い時間がかかる。

-国際社会に求めることは。

 活動資金の不足も重大だが、ただお金が必要というだけではない。日本を含め主要国に、中央アフリカの現状にもっと注目してもらいたい。このままでは大規模な飢饉(ききん)の恐れもある。今やらなければいけないことはたくさんある。

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中央アフリカ共和国

 2013年、イスラム教の反政府勢力が首都バンギを制圧。キリスト教武装勢力と衝突し、国連平和維持活動の展開後も分派した複数の勢力などによる抗争が続く。背景には金、ダイヤモンドなど豊富な資源争いがある。ユニセフによると、現在国内避難民は約64万人、近隣国への難民は約57万人。世界飢餓指数は今年、119カ国で最下位。新生児と妊産婦の死亡率は世界で2番目に高い。

小川亮子(おがわ・りょうこ)

  1980年、東京都生まれ。ロンドン大大学院で国際開発・教育の修士を取得。非政府組織(NGO)のモンゴル事務所や在タジキスタン日本大使館、外務省勤務などを経て、2014年2月からユニセフ中央アフリカ事務所に子どもの保護専門官として赴任。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2018年12月11日

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