子育て中の「プチ起業」を後押し シェアキッチンにレンタル販売箱

(2018年10月29日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる
 子育て中の女性を中心に料理やハンドメードなどの特技や趣味をいかして小さなビジネスを始める「プチ起業」が注目を集めている。ただ、いざ始めようと思っても、開業資金が予想以上にかかったり、法令などの壁が高かったりで、二の足を踏む人もいる。そんな中、起業を支援する動きが広まり、プチ起業家を後押ししている。               

「おへそキッチン」でパウンドケーキを袋詰めする新庄まきさん=東京都国立市で

いざ始めようと思っても「思わぬ壁」

 「このケーキは小麦の代わりに米ぬかを使っているんです」。東京都三鷹市の新庄まきさん(43)がキッチンの作業台で、焼きたてのパウンドケーキを丁寧に袋詰めしていた。

 国立市の「おへそキッチン」。コンロやオーブンなどがそろった調理場を新庄さんは月2、3回借りてケーキを製造。喫茶店などで販売している。

 子どもの時から菓子作りが好きだったという新庄さんがレシピを考案したのは7年前。「(当時4歳の)長男の体に良いモノを作りたい」と、米ぬかに着目した。試行錯誤の末にできたケーキは上品な甘さとどこか懐かしい香りが特長。多くの人に知ってもらうため販売を検討した。

 しかし、保健所の営業許可が必要で、検査をクリアする調理場を使わなければならない。自宅のキッチンでは許可は出ないが、適合する調理場付きの物件を借りると費用がかかる。いったん製造販売をあきらめていた。

月1万円のキッチン、月1000円のスペース

 そんな新庄さんが「おへそキッチン」を利用し始めたのは今年6月。入会金1万円で、10時間までなら月1万円で利用できる手ごろ感が決め手となった。

 2人の子育てで多忙だったが、「ケーキを買った人から反響がありうれしい。生活も一変し、張りもできました」。材料にこだわっているため原価が高く現状はもうけは出ていないが、今後販売数を増やしていきたいと話す。

 「おへそキッチン」がオープンしたのは4年前。代表の小野円(まどか)さん(42)がビル地下の一角を借り、自身のジャム製造のための調理場として整備した。今は、製造販売を目的とする人だけに貸す会員制の「シェアキッチン」として運営している。会員は保健所の営業許可を取得している。貸し出しは需要があることから、現在は2軒目の開設に向け準備している。

作家ごとにハンドメード作品が並ぶレンタルスペース「コトノハコ」=埼玉県朝霞市で

 ハンドメードのアクセサリーやガラス細工などを展示販売しているのは、埼玉県朝霞市のレンタルスペース「コトノハコ」。40センチ角の箱を約40人の作家に貸し出している。「実物を見たい」という消費者ニーズに応えながら、販売の場を提供している。

 作家の代わりに店番が代金を受け取る。箱は48あり、1箱のレンタル代は月1000~4000円。他にもワークショップや講座に使えるスペースも貸す。代表の滝沢いとさん(46)は「一人で事業をしていると不安も多い。ここを拠点にさまざまな人が交流し、つながれるようにしたい」と話す。

小さくても「ビジネス」自覚して

 プチ起業といっても商売に変わりない。都内で主に主婦向けの起業支援の講座を開く「リトマス」(国立市)代表の東希視子さん(58)は「お金をもらう以上は小さくてもビジネス。経費の意識や製品への責任をしっかり持ってほしい」と話す。「趣味の延長だから」とコストを意識せず赤字を続けたり、縫製などの仕上がりが甘かったりする人もいたという。

 知らずに著作権を侵害していたり、必要な所得申告をしなかったりする場合もある。東さんは「トラブルを回避するためにも、自治体などが開く起業に関する相談会を活用してほしい」と勧める。

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