産後クライシスと産後うつを防ぐ「心のケア」 1日3分”私”を主語に夫と話そう
2人1組で、思いの湧くまま3分話してみる
「今から3分間、自分の頭に思い浮かぶことをペアの相手に話してみて。支離滅裂でも大丈夫」
東京都武蔵野市で今月中旬に開かれた産後ケア教室には、産後2~6カ月の女性7人が赤ちゃんと参加した。講師は、産前産後支援をするNPO法人マドレボニータの産後セルフケアインストラクター、吉田紫磨子さん(48)だ。
バランスボールを使った運動で体をほぐした後、2人1組で「シェアリング」というワークに挑戦。語り手は「人生」「仕事」「パートナーシップ」の中からテーマを1つ選び、3分間、思いの湧くままに話す。「保育園に入れるか心配」「育休中、私だけが家事をしていてモヤモヤする」「夫と2人でキャンピングカーで日本一周するのが夢」-。聞き手はメモを取りながら口を挟まずに話を聞き、要約した内容を45秒間で相手に伝える。
これは「夫としゃべる」ための練習です
終了後、参加者からは「3分間は意外と長かった」「全然言葉が出てこなかった」という感想が。吉田さんは「産後は赤ちゃん中心の生活になり、夫とも事務的な会話しかしなくなりがち。自分を主語にして考えなくなると言葉も出てこなくなる」と指摘。「仕事への向き合い方やパートナーシップが大きく変わるこの時期だからこそ、希望や不安を言葉にすることは大事なこと」と強調した。
言葉で伝え合うことは、出産後、パートナーとの関係が冷え込む「産後クライシス」を防ぐ手立てにもなる。「ここでの『シェアリング』は夫としゃべるための練習です」と吉田さん。関係悪化の多くは妊娠、出産と大きな変化にさらされた妻の側が「なぜ私だけが…」というモヤモヤを感じながら夫にうまく伝えられなかったり、妻のSOSに夫が気付かなかったりするすれ違いから起きるからだ。
「言わなくても分かるよね」になりがち
「夫に対しては『言わなくても分かってるよね』と、コミュニケーションが雑になりがち。でも、1日3分でいい、日々の生活のことや今後の働き方、将来の夢などを共有できたら、子育て期を一緒に乗り切っていけるはずです」
講座を受けた産後4カ月の同市の会社員太田百合子さん(39)は、「テーマに沿って考え、話すのは久々で戸惑った。でも、夫との家事育児の分担で悩んでいることも、察してもらいたいと考えるのではなく、言葉で伝えようと思った。将来についての深い話もしてみようと思えた」と振り返った。
不安を言葉にして「産後うつ」も予防
日本周産期メンタルヘルス学会評議員を務める産婦人科医・宗田聡さん(56)=広尾レディース院長=は、約1割の女性が陥る「産後うつ」を防ぐ観点からも、不安を言葉にする「心の産後ケア」の必要性を指摘する。「ここ2、3年、産後の女性の『体』だけでなく『心』のケアの重要性も認知されてきている。産後うつの原因は、孤立してしまうこと。真面目な人ほどなりやすいが、会話の中で不安を言語化し、夫や周囲のサポートを受けることで予防できる」と話す。
※「すぎなみ子ども・子育てメッセ」は新型コロナウイルスの感染拡大予防の観点から、中止となりました。(2月19日情報更新)
なるほど!
グッときた
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知りたい
吉田紫磨子先生の産後ケアクラスに参加したことがあります。産後、体もガタガタで頭もぼーっとして言葉が出てこなかったのを覚えています。この記事の写真のように参加者のみなさんが1ヶ月のレッスンを終えて見違えるように元気にキレイになっていました。
産後は体力とともに言葉を取り戻す必要性があることを多くの人に知ってほしいと思います。