すくすく文化祭レポート 「開かれた子育て」広げよう 坂本美雨さんのトークに「楽になれた」

(2019年11月21日付 東京新聞朝刊)
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高円寺で開催された「すくすく文化祭」。ミニライブでは坂本美雨さん(左)の歌と、金属製の打楽器「ハンドパン」奏者の久保田リョウヘイさん(右)の演奏を親子で楽しんだ(戸田泰雅撮影)

 東京すくすくは10月27日、開設1周年を記念したイベント「すくすく文化祭」を杉並区高円寺で開きました。親子連れ約200人が来場。紙面とサイトで「子育て日記」を連載するミュージシャン坂本美雨さんのトークショーでは、飾らない本音も飛び出し、来場者の共感を呼んでいました。

「ネコばばあ」がいた 懐かしの高円寺

 会場となった高円寺は、坂本さんが幼少期を過ごした地。今も大のネコ好きで知られる坂本さんは「昔は、妖怪みたいな『ネコばばあ』が20匹、30匹飼っているようなネコ屋敷がたくさんありました」と振り返った。高円寺の公園で拾ったネコを、その後ニューヨークに引っ越した際にも連れて行ったという思い出も披露した。

 坂本さんはミュージシャン坂本龍一さんと矢野顕子さんの長女。「うちは特殊だったとは思いますが、父も母も忙しくて、二人のシッターさんが交互に来てくれていました。一人はおばあちゃん、一人はお姉さん。ちょっと違うキャラクターの二人が私を育ててくれました。両親のお仕事のスタッフさんたちも保護者のように接してくれて、違う大人にいっぱい育ててもらったという感じです」と子ども時代を振り返った。

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トークショーで子ども時代の思い出や子育てについて話す坂本さん

どんな子も「面白いところ」見つけたい

 自分が育った環境は今、自身の子育てにも影響を与えているという。娘が生後2カ月で仕事に復帰した坂本さん。「職場には子どもに慣れていない方もいますし、泣き声がうるさいな、と思われることもあった。でも『すみませ~ん、ありがとうございま~す!』って言いながら何回も連れて行っているうちに、子どものこういうところは面白いな、って思ってもらえるようになった。これは私の子だからではなく、どんな子であっても、その子の面白いところを見つけてくれるはずって思うんです」

 会場がグッと引き込まれたのは、出産直後から急速に夫婦仲が冷え込む「産後クライシス」の話題。「すくすく」で最も読まれている記事のテーマで、坂本さんは、夫との関係について「完璧に産後クライシス。そのまんま当てはまるんじゃないかと思います」ときっぱり。「結婚までは大好きでたまらなかった夫への愛情が、子どもが生まれた途端、赤ちゃんにばーっと向かって、夫がびっくりするっていう…。仕事との向き合い方や自分自身の心の問題とか、いろいろな要因があると思いますが、私はいろんな人の手を借りることを意識的にしました」とここでも“開かれた”子育ての良さを語った。

「1泊よろしく!」で夫のスキルアップ

 来場者の30代男性から父親の育児への関わり方へのアドバイスを求められると「(妻が)いきなりいなくなっちゃうのがいい(笑)。私はライブなどで出張もあるのですが、『1泊よろしく!』から始めて、2年くらいかけて徐々に夫にスキルをあげてもらって、今、最大3泊4日までできるようになりました」。

 4歳になった娘への思いを問われると「育ててはいるんだけれど、すでに娘にも頼っているんです、いろんなことを。頼り合って生きている感じ」と語った。「私の友人やスタッフでも、娘とその人との関係ができあがっていたりして、そういう人たちの影響も受けていくんだなと。成功した人だけじゃなく、ダメな大人も見てほしい。でもこの人も好きだなあ、とか、自分のことを好きになってくれるんだなあとか、肌で知るというのがいいですね」

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オープニングでは、地元・杉並区で子育て中に知り合ったメンバーで結成した「ゴスペルファミリー杉並」が歌声を響かせた

◇参加したみなさんの声

 妻と8カ月の長男と参加した中野区の会社員土屋宏太さん(39) 育児に悩んでいたのでヒントをもらえた。坂本さんのトークで「人を頼ってもいいんだよ」という言葉を聞けて楽になれた。

 1年生の息子と2人で来場した墨田区の会社員小林幸弘さん(49) 「産後クライシス」を知らなかった。女性の視点の話を聞き、私が気付いていなかったが、妻が大変だと思うこともあったかもしれないと感じた。

 2歳の長女と訪れた杉並区のパート川船亜貴子さん(37) 子どもも一緒にライブを聞けて楽しかった。娘が騒いだら、と心配だったけど、周りに同じくらいの子どももいて、気兼ねなく楽しめた。

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