〈坂本美雨さんの子育て日記〉15・場のリズムに乗って
白猫のお出迎え
中国の上海に来ている。小室哲哉さんとのコンサートのため、今回も娘を連れて。渡航前日まで娘のせきが止まらず、旅立ってからもヒヤヒヤしていたけれど、体調も安定。しかし無理は禁物と、空き時間は近くでゆったり過ごそうと決めていた。
お天気にも恵まれ、過ごしやすい気候の中、国慶節という建国記念の休暇中で、街にはゆったりした空気が流れている。ホテルの目の前には2つも大きな公園があり、娘とお散歩するには絶好のロケーション。公園を歩くと、生後4カ月くらいの白い猫がふっとお出迎えしてくれた。
こちらの野良猫、保護猫事情に思いをはせつつ、子どもたちの声が聞こえる方へ歩いていくと、滑り台のある遊び場があった。やったー!と娘は駆けていくが、入り口に着くと、目の前でいきなり女の子が別の子につまずいて派手に転がり、予想以上の勢いに娘はしばし立ち尽くす。
とても楽な場所
滑り台を下りてくる子が滑り切るのを待たずに、5歳くらいのフリフリのワンピースの女の子が下から駆け上がっていく。まだおぼつかない足取りで小さな子が階段をゆっくり上がる横を、子どもたちがスレスレで飛び降りてくる。思わず、あぶない!と思うが、周りの親たちは慌てる様子はない。そうだ、ここには独特なリズムがあるのだ。常識や習慣が違う、というよりも、リズムの違いだと思うと、もっと大きく場の空気を捉えることができる。
娘は周りのスピード感に少し戸惑いながらも、空いている方の滑り台でマイペースに遊んだり、現地の子たちに何げなく交ざろうとしてみたりしている。自分の常識、と呼ばれるものがまだ固まっていない子どもたちは、その呼吸感やリズムを感じて合わせていくのがとても早い。
2日目には、私はこの場所がとても楽だと感じていた。細かなことだけれど、知らず知らずのうちに人目を気にして子どもを不自由にしていることが、たくさんあるのかもしれない。もちろんこれは、どちらが良い、という話ではない。同じ国の中だってこういうリズムの違い、それによる気付きはあるだろう。
もしかしたら、子どもと一緒にいられて安全な場所ならば、どこでも居心地の良さを感じられるのかもしれない。子どもは、暖かい場所を探し出せる猫と同じ。どこにいても、楽しいことを見つけ出して、教えてくれるのだ。(ミュージシャン)
なるほど!
グッときた
もやもや...
もっと
知りたい