同性婚の制度がないのは「違憲状態」 東京地裁判決が示した「同性カップルが家族として法的保護を受ける意義」
憲法24条2項「個人の尊厳」
「同性愛者というだけで(パートナーと家族になることが)生涯を通じ不可能になることは、その人格的生存に対する重大な脅威、障害だ」。判決で池原桃子裁判長はそう指摘した。
「違憲状態」のよりどころとなったのは憲法24条2項。婚姻や家族に関する法律は「個人の尊厳」に立脚すべきだと規定している。
東京地裁判決では、パートナーと親密な関係を結んで家族をつくることは人生に充実をもたらし、「それについて法的保護を受けることも極めて重要な意義を持つ」と言及。だが同性だとこうした「個人の尊厳に関わる重要な人格的利益」を受けられないと論じた。
「個人の尊厳」には今年6月の大阪地裁判決も言及したが、「将来、違憲となる可能性はあるが、現段階では違反しない」と現行規定を合憲としており、判断が分かれる形となった。
自治体ではなく国レベルで
同性カップルを公的に認める自治体のパートナーシップ制度の評価についても判断が割れた。
大阪地裁判決では、パートナーシップ制度の拡大などを根拠に「同性愛者の不利益が相当程度解消、軽減されている」と効果を認めている。
一方、東京地裁判決は「家族として法的保護を受け、社会的に認証を受けることが法律上できない状態にある」と自治体の取り組みを超えた国レベルの制度が必要とし、それが「異性愛者も含めた社会全体の安定につながる」と強調した。
ただ解釈は「婚姻=異性婚」
ただ、東京地裁判決も先行2判決と同様、憲法24条1項の「婚姻」は「異性婚を指す」と解釈。同性婚を認めない民法などの規定は合憲とする一方、「同性愛者を取り巻く社会状況に大きな変化がある」と認めた。弁護団の寺原真希子弁護士は「社会の大きな変化をふまえ、原告の主張を直ちには切れないとした点は進展だ」とする。
東京地裁の審理では、前任の裁判長が原告の個別事情を「夾雑物(きょうざつぶつ=余計なもの)」と表現し、本人尋問の予定がなかった。だが交代した池原裁判長は一転、尋問を実施。判決はその際に原告が語った不利益にも触れていた。弁護団の上杉崇子弁護士は「裁判官の面前で原告が困難を語り、手応えがあった。大きな意義があった」と振り返った。
「婚姻の平等」へ一歩前進
東京地裁判決では同性間の婚姻に類する制度をつくることに大きな障害はないとした。青山学院大の谷口洋幸(ひろゆき)教授(国際人権法)は「今回の判決は24条2項を基に、同性のパートナーと家族になる法制度をつくらない選択肢はないと示している。この点は重要で、評価できる」と語る。
国会では、2019年に立憲民主と共産、社民の3党が同性婚を認める民法改正案を衆院に提出したものの、昨年の衆院解散で廃案となるなど、法整備への動きは遅々として進まない。
早稲田大の棚村政行教授(家族法)は「札幌地裁判決に続き、婚姻の平等へ一歩進める司法判断。原告らの切実な声に裁判所が一定程度、前向きに応えた」と評価しつつ、国会や政府に対し「この問題の検討や議論を真摯に始めなければならない」と提言している。
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