コロナ禍で産後の母親を孤立させないために 保健師訪問や子育て広場が中止…家族はまず不安を受け止めて

(2020年5月29日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる
 出産直後は、慣れない育児に悩みがちな母親への支援が最も必要な時期だ。しかし、新型コロナウイルスの影響で、自治体の保健師訪問や子育て広場が中止になるなど、産後まもない親子が孤立しやすい状況が続く。専門家は、この時期特有の悩みを周囲が理解し、ケアする必要性を訴える。
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最も支援が必要な時期 まじめな人ほどつまずきやすい

 「自宅で赤ちゃんと2人きりでいる母親は、まじめな人ほど赤ちゃんとの触れ合いでつまずきやすい。産後1〜2カ月は、母親が一番支援を求めている時期です」。産後ケアや周産期のメンタルヘルスに詳しい東京医療保健大の米山万里枝教授(60)はこう指摘する。

 米山さんが学生と実施した聞き取りなどの調査では、赤ちゃんを泣かせないようにと、常に両手で抱っこしていて「自分は食事も掃除もできない」と訴える母親も。目を合わせてお世話することで徐々に赤ちゃんの訴えが分かるようになってくるが、おむつ替えや授乳などに精いっぱいで、コミュニケーションがうまくいっていないケースもあった。

里帰り出産ができず、実家の支援を得られないケースも

 「生後1カ月ごろに行われる保健師の訪問で、赤ちゃんとの接し方についてアドバイスを受けると、母親も楽になっていくことが多いが、今はそれも中断されている」。予定していた里帰り出産ができなかったり、実家の支援を得られずに育児のスタートを切ったりしている家庭も多い。

 生後3〜4カ月ごろになると、同じ月齢の赤ちゃんが集まる子育て広場なども開かれているが、今は中止されている。米山さんは「母親自身も外出するとコロナに感染するのでは、という不安から健診や予防接種を控えてしまうと、専門家のサポートを受けられなくなる」と懸念する。

 米山さんが心配する背景には、周産期の産後うつ病の発症率が10〜15%と高いことがある。2015〜16年には、妊娠中〜産後1年未満に死亡した妊産婦357人のうち、28.6%にあたる102人が自殺するなど深刻で、この時期のメンタルヘルス対策は重要だ。

在宅勤務の夫は「会社生活をそのまま持ち込まない」

 家庭内で気を付けるべきことは。夫がコロナ対策で在宅勤務の場合、「赤ちゃんを泣かせるな」という態度は妻を精神的に追い詰めるため禁物だ。家事の負担も分かち合おう。米山さんは「会社生活をそのまま持ち込まず、家庭での役割を考えて」と話す。

 「母親自身も赤ちゃんを家族に任せ、ゆっくり食事や入浴の時間を取ることを意識して」。赤ちゃんの発達などに不安があれば、自治体などの電話やメール相談窓口もある。米山さんは「パートナーや家族は、母親の気持ちや育児の心配事を否定せず傾聴することが大事」と助言する。

無料で健診する病院もあります

 母子が孤立しないよう支える動きも出ている。各地の集団健診が中断される中、東京都世田谷区の「みくりキッズくりにっく」では独自に、生後2週間、1カ月、3〜4カ月、3歳健診を無料で実施している。事務長の佐藤徹さんは「この時期ならではの育児の不安や虐待リスクを把握したい」と話す。

 狛江市は、3〜4カ月健診を市内の指定病院に委託。母子は予約の上、無料で健診を受けられるようにした。

 荒川区の「いなばキッズクリニック」も予防接種などで訪れる母子に無料で健診を実施。首の据わり方や股関節の脱臼がないかなど、3〜4カ月健診の項目を確認する。稲葉八興(やおき)院長(55)は「何よりも、育児不安に陥りがちなお母さんを『今の調子でいいんだよ』と安心させ、自信を持たせてあげることが大切」と話す。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年5月29日

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