母子手帳どこが変わる? 2023年4月に11年ぶりリニューアル 産後うつをケア、父親が書く欄を新設
自治体が独自編集する任意のページも
母子手帳は、妊産婦や新生児の記録など厚生労働省が定めた全国共通の省令様式と、子育てに役立つ情報などを厚労省がまとめ、自治体が独自に編集もできる任意様式のページがある。
厚労省は母子手帳を約10年ごとに見直しており、今回は小児科医や学識者による検討会が昨年5月から内容を議論。省令様式では妊産婦のメンタルヘルスへの配慮や乳幼児健診の項目を改めた。任意様式では、災害に備えて連絡方法を記すスペースや、18歳までの子どもの身体の成長を記録する欄を加えるように促した。
任意様式に父親らがメッセージを書く欄を独自に作るなど、先進的な取り組みをしてきた愛知県小牧市の保健センター係長三枝尚子さん(53)は「妊娠後期から出産、乳幼児期まで母親の支援が手厚くなった」と省令様式の変化を歓迎する。
産後ケアや早期支援につながりやすく
三枝さんが注目したのは、産後うつの疑いを30点満点で得点化する「EPDS(エジンバラ産後うつ病質問票)」の実施などを問うようになった点。産後ケア施策の充実に伴い、ケアの利用日や方法を書く場所も新設され「ケアを利用しやすくなる」と期待する。
「母親や医師だけでなく、子育て世代包括支援センターなどの職員も記入するようになっており、子育てに関わるすべての人たちで見守ろうとするスタンスだ」と三枝さん。小牧市では6月中旬から新たな様式で配ることを目指すという。
母子手帳の歴史に詳しい椙山女学園大の非常勤講師中島正夫さん(70)は、予防接種を始めることが多い生後2カ月時点で、保護者が気になる点を書く欄を設け、医師への相談を促していることを評価する。「子どもの育ちを把握する上で参考になり、早期の支援にもつなげやすい」と語る。
新たに「父親が気持ちを書くページ」
今回の見直しでは、父親の育児参加を促すため、名称を「親子手帳」などに変更するかどうかも議論に。検討会でも賛否が割れたが、健康リスクが高い母親の妊産期支援の重要性は変わらないほか、小牧市のようにすでに「親子健康手帳」と併記する自治体もあることから、変更しないことになった。一方で、省令様式の中に、父親が赤ちゃんを迎える気持ちを書くページができた。
中島さんは「母子健康手帳は、妊産婦と子どもの健康を守るという意味で、分かりやすい名称。母親は妊娠中や出産時の気持ちを書くことで、自身や子どもの健康を守ろうとする意識が高まる。熟読して丁寧に記入して」と呼びかけた。
デジタル化で紛失時のバックアップに
厚労省の検討会は母子手帳のデジタル化推進に向けた報告書もまとめた。
国はすでに、マイナンバーカードを取得した人が利用できるネット上のマイナポータルで、妊娠中の経過や出生時の身長、体重を閲覧できるようにしている。また、一部の自治体は、子どもの身長や体重を記録し、予防接種の日程を管理するアプリも導入。デジタル化は必要とされてきた。
検討会は、産後ケアの利用状況や新生児の訪問指導時の内容もマイナポータルで見られるように求めた。検討会メンバーだった国立成育医療研究センターの小林徹データサイエンス部門長(50)は「デジタルで記録を残すことができれば、災害時に紙をなくした時のバックアップにもなる。国民にとって利便性の高い社会を」と先を見据える。国は「母子健康手帳情報支援サイト」を4月以降に本公開する。
なるほど!
グッときた
もやもや...
もっと
知りたい