〈田中健さんの子育て日記〉36・娘のお気に入り

(2018月8月10日付 東京新聞朝刊 )
子育て世代がつながる

田中健さんの子育て日記

写真

どこに行くにも娘と一緒の、ぬいぐるみのバンビ

  旅に出ようと思うといつも思い出す出来事があります。 

 5月晴れの休日、娘は当時2歳8カ月。家族と友人で横浜を歩き、ディズニーグッズ店の前を通りました。折しも乳がん予防啓発のピンクリボンキャンペーン中で、珍しいピンク色のバンビのぬいぐるみが店頭に並んでいました。

 友達との間で、遊んでいるおもちゃを上手に貸したり、借りたりができるようになった頃でした。1つのおもちゃに執着を見せることはあまりなかった娘が、かわいらしいバンビを抱えて動きません。

 珍しいこともあるなぁと思いました。大抵は声掛けなどせず、飽きるまで持たせて元に戻すのを待つ家内も「バンビちゃん欲しいの?」と声を掛けます。娘が「うん」とうなずくので、家内が再度「大事にできる?」と尋ねると、また大きく「うん」とうなずく娘。「それでは『くださいな』をしましょうね」と2人でレジに向かいました。

 タグを外してもらい、そのまま離さず街を歩きました。来月で11歳になる娘は、今でも毎晩バンビを抱えて眠っています。

なくさないように

 バンビのご飯だと、ビーズを碗(わん)に盛っておままごと。絵本や映画の「バンビ」も何度も繰り返し見ていました。

 夜、バンビが見当たらないと焦って捜し、見つかるとホッとして眠りにつくように。特別な宝物として存在感が増してからは、なくさないようにと僕もハラハラしました。

 ありがたいことに、娘がバギーで眠ってしまいバンビを落とすアクシデントがあっても、何度も拾われ無事に危機を乗り越えてきました。

 「さっき優しい方が拾ってくださったよ」と説明すると、寝ぼけていても一大事が起きたことを感じるようで、自らなくさないような工夫もし始めました。この写真は、5歳頃でしょうか。工夫を始めてだいぶたつ頃には、旅先でリュックのベルトに挟んで歩く姿も定着しました。

旅も一緒

 小学生になり、宿泊を伴う校外学習の際には、バンビは家で留守番となりました。それでもプライベートの旅では、今でもバンビを同行し、一緒に写真に納まっています。

 このまま一生の宝物となる気配ですが、中綿も薄くなり首も細くなり、バンビも随分年を取ってしまいました。家内は、バンビが原形をとどめているうちに絵に残そうと考えているようです。

 今年の夏休みはバンビも初ヨーロッパです。その模様はまた次回に。 (俳優・ケーナ奏者)

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