〈中倉彰子さんの子育て日記〉12・不安消した娘の表情

(2012年12月14日付 東京新聞朝刊)

中倉彰子さんの子育て日記

将棋大会デビュー

 夫婦で将棋を職業としているので、子どもたちにも、たしなむ程度にはできるようになってほしいなと思っています。

 ただ、本格的に将棋を教えよう!という気持ちにはなかなかなれず、きっかけづくりのために、思い切って将棋大会に参加してみました。

 長女のマイ(7つ)はぎりぎりルールが分かる程度。次女のマキ(4つ)は全く分かりません。夫婦で猛特訓!とはいかず(笑)、ほとんど一夜漬けで大会に臨みました。

 マイにはとりあえず、相手の王将の取り方(一手詰)と序盤の型を、マキにはとにかく駒の動かし方を教えました。

 さて、予選第一局。マイは姿勢よく対局開始の合図を待っています。マキはというと、大きなお兄ちゃんに囲まれ、おびえたような表情。しばらく我慢していましたが、始まる前にとうとう泣きだしてしまいました。

 マイは相手の「角」を取れる場面で、マイペースに自分の王将を守っていて攻め込まれ、あっさりと負けました。そこで夫が対局を終えたマイに、携帯電話に将棋の画面を出して説明。マイはその後の対局で、相手の角を取ることができました。

 私は飽きてしまったマキを連れて、一足先に帰ることに。一方、マイは予選を通過できませんでしたが、自由対局で相手を見つけて、どんどん指しました。実戦を重ねるごとに理解できることが増え、5回目に初めて「勝ったよ!」と、うれしそうに夫に報告したそうです。全部で15回も指し、たくさん指すともらえる「将棋型消しゴム」を持ち帰って、誇らしげに家族に見せていました。

 「たくさん負けて、将棋が嫌になってしまうかな」という不安もありましたが、娘の充実した表情を見て、参加させて良かったと思いました。

付き添いの気持ちが分かった

 将棋大会には数え切れないほど出ていますが、子どもの付き添いとしては初めて。普段、大会にお子さんを連れて来られる親御さんたちの気持ちを感じることができ、良い体験になりました。今後、私が大会を運営する際には、娘のような初心者でも将棋を楽しむことができ、親御さんにとってもわが子の成長を感じることができる、そんな大会を目指したいと思います。(プロ棋士)

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