道徳教材、読むのは途中まででいい! 都内の教員が「子どもの内面に介入しない」ための本出版

(2018年3月6日付 東京新聞夕刊)
写真 出版された「『特別の教科道徳』ってなんだ?」

出版された「『特別の教科道徳』ってなんだ?」

 道徳の教科化が4月に迫る中、東京都内の小学校教員宮沢弘道さん(40)と中央大教授の池田賢市さん(55)が、「『特別の教科 道徳』ってなんだ?」(現代書館)を出版した。本では、教材を途中までしか読まない「中断読み」を提唱。道徳が評価の対象になり、子どもたちに価値観が押し付けられることを心配する教師らは、ひとりひとりの内面に介入しない授業の進め方を模索している。

「教材を作る大人以上に、子どもたちは豊かな発想を持っている」

 4月から小学3、4年生の教科書で扱われる教材「同じ仲間だから」は
(1)運動が苦手な光夫と運動会で同じグループになったひろしが、けがをしている光夫に練習を休むことを勧める
(2)同じグループのとも子は休むよう勧めるべきか心が揺れる
(3)とも子は「光夫さんを外して勝とうとするなんて、まちがっている」とひろしを諭す
-というストーリーだ。

 宮沢さんらと一緒に道徳の教科化について議論してきた教員仲間は、授業で「同じ仲間だから」を使い、(2)までしか読まない「中断読み」を実施。すると、「光夫を休ませて勝ちたい」という教材が想定するひろしの考えに半数以上の子が気付かなかった。

 子どもたちからは「(運動会までに治してほしいから)光夫に練習をやめておけよと言う」「自分の判断で決めればいい」など、光夫とひろしそれぞれの立場に立って自由な感想が出された。

 教材の狙いは「友情・信頼」だが、宮沢さんは「教材を作る大人の発想以上に、子どもたちは優しさや豊かな発想をたくさん持っている」と指摘。「どういう読み方をすれば子どもたちの内面を操作せずに済むか考えるべきだ」と話す。

写真 「教科化がもたらす問題点も検証したい」と話す宮沢弘道さん㊨と池田賢市さん=東京都八王子市で

「教科化がもたらす問題点も検証したい」と話す宮沢弘道さん㊨と池田賢市さん=東京都八王子市で

公教育が「これが良いこと」と言い切っていいのか

 宮沢さんも池田さんも、道徳の教科化について「教える中身にかかわらず、内心に関わることを評価も伴う教科とすることが問題だ」と批判している。

 しかし、教科化が目前に迫り、実際に授業をする現場の先生たちに問題意識を持って実践してほしいと、「『特別の教科 道徳』ってなんだ?」を出版。「同じ仲間だから」など6つの教材について、中断読みと最後まで読んだ時の子どもたちの反応の違いなど、具体的な実践例を紹介している。

 「公教育が『これが良いこと』と言い切ることへの警戒心が薄いと感じる」という宮沢さん。「幅広い人たちに読んでもらい、一緒に考えてほしい」と話す。

道徳の教科化とは

 2011年に大津市で中学生がいじめを苦に自殺した問題をきっかけに政府の教育再生実行会議が13年に提言。翌年、中教審が教科外活動の小中学校の「道徳」を、正式な教科とするよう答申した。「特別の教科」として、小学校では18年度、中学校では19年度から実施。検定教科書を用い評価も行う。

3

なるほど!

0

グッときた

0

もやもや...

0

もっと
知りたい

すくすくボイス

  • 匿名 says:

    全く同感です。大人の価値観、特に今は、少しずれてる価値観を子供に埋め込む必要はなく、各々がどうしたらいいかなといろんな意見を持ち寄り考えることが大事だと思います。道徳に点数をつける馬鹿な大人が考えた本の答えなど要らない。

      

この記事の感想をお聞かせください

/1000文字まで

編集チームがチェックの上で公開します。内容によっては非公開としたり、一部を削除したり、明らかな誤字等を修正させていただくことがあります。
投稿内容は、東京すくすくや東京新聞など、中日新聞社の運営・発行する媒体で掲載させていただく場合があります。

あなたへのおすすめ

PageTopへ