自治体独自で「日本語適応学級」も 外国人の子どもの不就学問題 集住地域は独自の取り組み
日本語指導が必要な子、10年で1万7000人増
日本語指導が必要な子どもは年々増えている。文科省調べで、公立学校で日本語指導が必要な児童・生徒は、2018年は約5万人。10年間で約1万7000人増えた。
定住外国人の支援に取り組むNPO法人「青少年自立援助センター」(東京都福生市)の田中宝紀氏は「外国人集住地域以外の自治体では『学校では面倒を見られない』と事実上拒否されることもある」と、支援の受けにくさを指摘する。
愛知・知立の学級 教員「人数が多い時は大変」
集住地域では、それぞれ取り組みを進めている。
「シュクダイー(宿題)!」。11月初旬に来日したブラジル国籍の小学2年、ジュリアちゃん(仮名)が楽しそうに声をあげた。愛知県知立市が設けた、来日間もない小中学生を対象の日本語適応学級「かきつばた」。就学前に3カ月間、日本語の読み書きや計算、学校の生活習慣を学ぶ。
この日はジュリアちゃんとブラジル国籍、フィリピン国籍の計4人が学んでいた。昨年は15人が一度に学んだ時もあった。担当教員は3人。女性教員は「子どもが日本語で初めて名前を書く場所に立ち会えるのが楽しい。ただ多いときは本当に大変です」と話す。
愛知県三河地域には自動車産業関連の工場が集まり、外国人労働者も多い。市内10の小中学校すべてに外国籍の子どもがいる。「かきつばた」のある知立東小は全児童の約6割が外国籍だ。日本語指導が必要な子どもは日本籍の子も含めて約7割に及ぶ。
「集住地域のノウハウを、全国で共有する必要」
外国籍の子どもは30年前から徐々に増えた。当初は受け入れ態勢が整わず、学校に来なくなる子もいた。現在は日本語の習熟度で4クラスに分けて対応。国の教員配置基準を超える分は、県と市の予算をあてる。それでも市教育委員会の担当者は「十分とは言えない」と話す。
愛知淑徳大の小島祥美准教授は、そうした集住地域の取り組みを全国の自治体で共有する仕組みが必要だと指摘。「蓄積したノウハウを還元することが日本全体を豊かにする」と話す。
文科省は来年度予算の概算要求で、外国人児童生徒等への教育の充実を図る経費として本年度の約1.7倍にあたる9億5800万円を盛り込んでいる。