僕の母校に息子が入学 40年ぶりの校歌、歌えました〈古泉智浩さんの子育て日記〉22

(2021年4月16日付 東京新聞朝刊)

古泉智浩さんの子育て日記

池でコイを呼ぶうーちゃん(左)と、妹のぽんこちゃん

こんな校舎だったっけなあ? 

 6歳の養子の男の子、うーちゃんは小学生になりました。通うのは、僕が40年前に通っていた母校です。入学説明会に行った時に40年ぶりに校内に足を踏み入れましたが、懐かしいという感覚は全くなく、「あれ? こんな校舎だったっけなあ?」と思いました。

 大幅な改修工事がなされているのか、自分の記憶と重なりません。しかし、自宅からの通学路をうーちゃんと手をつないで歩くと、道の曲がった先に学校が見えてくる感じがよみがえります。

戦場に送り出すような気持ち

 入学式は体育館で行われました。昨年ならコロナの影響で開催がなかったため、今年はよかったです。しかし、式典は来賓の出席などはなく簡略化されています。

 新1年生は、男の子は上下のそろった半ズボンのスーツで、女の子は思い思いの華やかな洋服です。保護者も先生方もビシッと正装をして、うーちゃんもちょうネクタイです。参列していて、「何かこんな場面見たことがあるぞ」と記憶を探っていると、召集令状が届いた若者を出征させる日本軍のイメージがオーバーラップします。

 僕自身、学校はあまり楽しい場所ではなく、できれば休みたかったのですが、父が怖く、しかも自宅で商売をしていてずっと家にいるため、家よりは学校の方がまだましだという理由で休まずに登校していました。友達付き合いやお勉強、運動。何か失敗したら厳しい対応を迫られる戦場に、精いっぱいきれいな洋服に身を包んで万歳三唱を繰り返し、子どもを送り出す親の気持ちが重なります。

自分の歴史をなぞってくれる

 校長先生やPTA会長の祝辞の後、校歌を歌いました。1年生は歌えませんが6年生や先生方が歌ってくださり、なんと、僕も歌えました。40年前に歌ったきりなのですが、メロディーに合わせて歌詞を口ずさめます。同じ歌をうーちゃんが、そして4年後には里子のぽんこちゃんが歌ってくれるのかと思うとたまりません。自分の歴史を2人の子どもがなぞってくれます。僕は偏差値の極めて低い高校の出なので、そこは同じ歴史を歩まないでほしいのですが…。

 僕が心配性なだけで、学校はとても温かい雰囲気で先生方も頼もしく感じました。うーちゃんは入場と退場でしっかりと行進し、幸先のよいスタートです。

 楽しく豊かな学校生活を送れますように。(漫画家)

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