都立高のオンライン授業に格差 全教室にWi-Fi整備は3割だけ 「学習の遅れが…」不安の声

土門哲雄、松尾博史 (2021年5月23日付 東京新聞朝刊)
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生徒のいない教室からスマートフォンで同時双方向のオンライン授業をする飯塚大貴教諭=7日、東京都文京区の向丘高校で

 新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言中、東京都立高校は、校内の生徒数を3分の2以下に抑える分散登校を続けている。登校しない生徒はオンラインを活用した自宅学習としているが、学校側の通信環境や取り組みに差があり、生徒や保護者から「学習が遅れていないか」と不安が漏れる。 

分散登校での授業 「通信回線が命綱」

 東京都教育委員会は4月29日~5月9日の大型連休中、授業のある日も全ての高校生を登校させず、自宅学習の「全面オンライン」とした。連休後の分散登校は、登校日や時間帯を学年ごとに分け、自宅学習ではオンラインの活用を促している。

 連休中の7日には、都立向丘(むこうがおか)高校(文京区)でオンライン授業が報道公開された。生徒がいない教室で、飯塚大貴(だいき)教諭(27)がスマートフォンを使って化学基礎の授業を配信し、1年生のクラス40人が自宅からタブレットなどで参加。同時双方向のライブ形式で行われ、生徒からも画面越しに質問が飛んだ。

 滝本秀人校長は「通信回線が命綱。オンライン授業は学校全体で取り組むことが大切」と強調。同校は連休後も自宅学習で同時双方向のオンライン授業を続けている。

ホームルームの出欠確認だけの学校も

 ただ、こうした学校ばかりではない。

 都教委の教育政策課によると、高校のほか特別支援学校なども含めた都立校のうち、無線LANのWi-Fiが全教室に整備されているのは2020年度末時点で87校で、全体の約3分の1にとどまる。通信環境が不十分な残りの168校は、当初の計画を1年前倒しして本年度中にWi-Fiを整備するという。

グラフ 東京都立校の通信環境

 未整備のある都立高は、大型連休中に同時双方向で各学年一斉に行ったのはホームルームの出欠確認だけだった。生徒は事前に用意された授業動画を見たり、課題学習に取り組んだりした。副校長は「同時双方向のオンライン授業は通信環境が厳しく、できない」と打ち明ける。

「私立は通信環境も充実しているのに」

 この高校は感染者が確認された昨年末以降、6限までの通常授業は行わず、4限で終え、感染リスクが高まる昼食前に生徒を帰宅させている。電車の混雑を避ける時差通学で始業も遅らせ、通常の50分授業を40分に短縮している。連休後は午前と午後で4限ずつに分け、学年ごとに分散登校を続けている。

 同校の3年の女子生徒は「本当なら授業がもっと進んでいるはずなのに。他の学校より遅れてないか」と不安を隠せない様子。母親も「感染拡大から1年以上たち、私立は通信環境も充実しているのに」と残念がる。

 こうした声に、都教委の担当者は「オンラインを活用した学習は同時双方向のライブ形式に限らず、繰り返し見られる動画配信のニーズも高い。本年度中にWi-Fiを全校に整備し、環境を改善する」と理解を求めている。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2021年5月23日

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