中学校給食が選択制の横浜市 実質は配達弁当、利用は2~3割 「全員制の温かい給食」求める保護者も

杉戸祐子 (2021年8月4日付 東京新聞朝刊)
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弁当箱に詰めて配達された「給食」を食べる生徒ら=横浜市泉区で

 378万人が暮らす全国最大の基礎自治体・横浜市。市長選(8月8日告示・22日投開票)を控え、争点となる課題の一つ「中学校給食」の現場を取材しました。

配達弁当「ハマ弁」が4月から給食扱いに

 7月中旬、横浜市立上飯田中学校(泉区)。昼食開始のチャイムが鳴ると、2年生の教室で、30人中15人が「給食」を食べ始めた。この日のメニューはご飯と豚丼の具、アスパラサラダ、スープカレーなど。

 「きょうだいが多いから親の手間がかからないように毎日給食」と男子生徒。家庭弁当と給食が半々という女子生徒は「親が忙しい時や給食に食べたいメニューがある日は給食」。注文していない男子生徒は「好き嫌いを分かっている親が作る弁当の方が食べやすい」と話した。

 この「給食」の前身は、横浜市が2017年から全校で導入していた配達弁当「ハマ弁」。今年4月、学校給食法上の「給食」と位置付け、家庭弁当などの中から選ぶ「選択制の給食」になった。7月の利用率は21%だが、最大利用率を3割程度と見込む。

全員制は困難 費用や用地確保がネック

 横浜市は選択制について、2019年に小中学校計24校の児童・生徒と教職員、保護者を対象に行ったアンケートで「自由に選択できるのが良い」が最多だったことを挙げ、「選択制が最善の方法。自分で食を選択する力を養える」と説明する。校内で調理する「自校方式」や近隣校で調理して運ぶ「親子方式」、給食センターで調理する「センター方式」、それらの組み合わせによる「全員制」の給食について、費用や用地確保などの理由で「実施は困難」としている。

 ハマ弁を給食と位置付けたメリットについて、横浜市教育委員会の赤井守健康教育・食育課長は「市が献立作成や衛生管理に責任を持つようになった」と説明する。ハマ弁時代は民間業者の人件費の一部も利用者が負担していたが、給食化で負担は食材費のみとなり、10円値下がりした。

 しかし、市民の反応は良いとは言えない。小中学生の保護者らでつくる「横浜でも全員制の中学校給食が『いいね!』の会」が4月から実施しているアンケートの中間報告によると、6月末までに回答した1266人の89%が「全員制」が良いと答え、「選択制」を望むのは10%だった。

「給食は教科書のような存在。全員制を」

 同会の朝見幸子共同代表(46)は「給食になったことは一歩前進」と受け止めた上で、「給食は教科書のような存在。生徒全員が平等に学びながら温かくて栄養のある食事をとれるよう、全員制の完全給食を求めていく」と話す。

 全員制を求めて署名活動を行う「横浜学校給食をよくする会」の鈴木圭子代表委員(82)も「コロナ禍で子どもの貧困格差も広がる中、全員制の温かい給食を実施するべきだ」と訴える。

 全国的に見ると、全員制を取り入れる自治体は増えている。政令市では、隣接する川崎市が2017年度から全校で完全給食を提供。大阪市は選択制のデリバリー方式だったが、2019年度までに全校で自校調理方式か親子方式による提供に変えた。

 元横浜市立小学校教諭で学校給食研究家の吉原ひろこさん(74)は、中学校で全員制とする意義を「小学校時代の食育を継続し、成長期の生徒に同じように栄養を与えられる」と話し、こう指摘した。「子どもを育てることが横浜の未来を育てることだという意識がトップにあるかどうかだ」

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2021年8月4日

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