生きづらさを感じる子に居場所を 小学校教諭を辞め、横浜で教育支援団体を設立した廣瀬さんの決意「教員の立場には限界がある」

志村彰太 (2021年9月22日付 東京新聞朝刊)
 14年間続けた横浜市立小学校の教諭を辞め、家庭内や人間関係の問題で不登校になるなど「生きづらさ」を感じる子どもに居場所を提供する社団法人「かけはし」を今年5月に設立した廣瀬貴樹(ひろせ・たかき)さん(38)。同市泉区の複数の施設や畑で週3回、一緒に遊んだり勉強をしたり、農作物を育てたりしながら「子どもたちが自分らしくいられる場所」を設ける。
写真

「生きづらさ」を抱える子どもの居場所づくりに取り組む広瀬貴樹代表=横浜市泉区で

夫婦で教員を辞め、子どもにとことん寄り添う道へ

 自分に自信がなかった小中学生時代、ささいなことでも褒めてくれる教員に出会い、あこがれた。2007年に市立小の教員となり、「一緒に悩んだり、サッカーをして遊んだりして、ともに成長し合える関係を大事にしたい」と、できる限り児童に寄り添うことを心掛けた。

 しかし、現実は厳しかった。ひとり親や外国籍、夜も家に一人でいる子など児童の背景や抱える問題は多様だった。「教員として、どこまで家庭に踏み込んでいいのか」と悩んだ。1人の子に向き合いすぎるとクラス全体が見えなくなり、「学級崩壊直前の状態」も経験。「子どもにとことん寄り添いたい。教員の立場では限界がある」と考え、同じく市立小教諭の妻千尋さん(40)と共に、教職を辞して新たな道を選んだ。

 周囲からは「夫婦して辞めるのは無謀」などと言われたが、これまでの教員生活で関わってきた人たちが手を差し伸べ、法人設立と運営に協力してくれた。「さまざまな団体とつながって、一緒に子どもを支えていく懸け橋になる」「子ども同士が関わり、いろんな大人と出会う」という意味を込めて、法人名を「かけはし」とした。

思い思いに過ごせる場 子どもが店員のカフェも

 現在、常勤スタッフ3人、ボランティア9人で運営する。ほとんどが教員免許保有者という。8月までに7人の子どもが入会した。同級生や教員との関係に悩んだり、新型コロナウイルス感染が心配で登校できなかったり。それぞれの事情を抱えた子どもたちは教室に来ると、パズルやカードゲームをして遊んだり、勉強したり、思い思いに過ごしていく。「何をするか、どこまで勉強をするかなどは子ども自身に考えてもらう。仕向けることはしない」と自主性を重んじる。

 次は、空き家を改装して近隣住民が利用するカフェを造る予定。子どもたちに店員になってもらい、大人と関わる機会を設けたいという。「一人一人の個性に合った多様な学びがあっていいと思う。地域の企業や団体、行政が連携して、多様な場で学び育つ子どもを支える社会をつくっていきたい」と話した。

一般社団法人「かけはし」 

 対象は小学1年~中学3年で、毎週月曜午前10時15分~午後2時に下和泉ケアプラザ、水曜午前9時半~午後2時に「いちょうコミュニティハウス」、金曜午前9時半~11時半に泉図書館か、いずみ野地域ケアプラザで教室を開く。畑では不定期で苗の植えつけをすることもある。入会金3000円、会費は月3000円。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2021年9月20日

0

なるほど!

0

グッときた

0

もやもや...

0

もっと
知りたい

あなたへのおすすめ

PageTopへ