いじめに悩む学校現場 アンケートに96%が「第三者の介入が必要」 保護者との関係づくりにつまずきも
「敵対関係になり解決策を共有できない」
10~11月にかけ、いじめ対応で難しいと感じる点や、いじめ防止対策推進法への考え方を尋ねた。無作為に選んだ教委100団体と小中高校150校に協力を求め、無記名で得た443分の回答を集計した。
難しい点として最多だった回答は「保護者との連携」で、6割が選択した(複数回答)。対応が遅れる原因を聞いた質問(同)でも、半数が「保護者との話し合いが難航し、関係がこじれる」ことを挙げた。
こじれる理由は「説明しても(保護者が)納得しない」(64%)、「一方的に責められる」(38%)が多かった。自由記述では「敵対関係になり解決策を共有できない」「対応不可能なことも要求され、応じないと連絡が取れなくなる」と被害者の保護者との距離感に苦慮する声が聞かれた。
主張が食い違ったら? 難しい「判断」
難航した際、中立の第三者機関が介入して解決に協力することについて、96%にあたる425人が「必要」と回答。「必要ない」は9人のみだった。
保護者との連携以外では、「いじめの判断」も難しい点に挙げられた。いじめ防止対策推進法で、いじめは、他の児童生徒の行為により心身の苦痛を感じたものと定義されるが、アンケートでは「被害、加害とされる双方の主張が異なった場合、一方的な判断は子どもたちとの信頼関係に影響する」などとして、見直しを求める意見が相次いだ。
文科省ガイドライン、現実的でない?
いじめ防止対策推進法を詳しく説明した文部科学省のガイドラインについて「必ず従うべきだ」とする回答は61%にとどまり、「内容による」が38%に上った。法が現実的でないととらえる空気の広がりをうかがわせる。
ほかにいじめの解決を妨げる要因として、多忙や教員同士で相談しにくい学校風土、いじめの重大性や法を理解せず保身に走る教職員の存在の指摘もあった。
森田さんはアンケート結果を法改正やこども庁創設に生かしてもらうため、近く国会へ提出する。
学校と保護者が対立「守るべき子どもが置き去りになっている」
息子がいじめに 見えた学校側の悩み
森田さんは、息子(19)が中学時代にいじめに遭った経験からいじめ問題に取り組み、NPO法人「プロテクトチルドレン」を設立して子どもや保護者、対応に悩む学校や教育委員会からも相談を受けている。
森田さん自身、息子のいじめで学校や教育委員会の不適切な対応を経験したため、当初は保護者の立場で活動した。しかし、学校や教委から話し合いの扉を閉ざされ「これでは解決しない」と気付いた。
「味方をするのは子どもだけ」と決め、保護者と学校側の言い分を中立の立場で聞くようにしたところ、学校や教委側の悩みも見えてきたという。
根本原因が解明されず、風化の連続
「深刻ないじめが起きると学校や教委が批判されるが、根本的な原因が解明されずに問題の風化が繰り返されてきた」として、学校現場の実情を踏まえた改善策の必要性を指摘する。
9月、西日本にある高校の女子生徒の保護者から「いじめを受けている」と相談があったケースでは、女子生徒が学校を休みがちになって既に1年が経過していた。悪口を言われて無視され、私物も壊されたのに「学校は何もしてくれない」という。
学校に話を聞くと、対応はいじめの発生から2カ月後と遅かったものの、関係者に聞き取り調査し、相手生徒には壊した私物代を弁償させている。
学校・保護者・生徒が率直に話せる場
さらに、調査で女子生徒も相手生徒の悪口を言っていたことが判明したが、校長は「(女子生徒の)保護者には話していない。耳を貸すと思えなかった」と打ち明けた。
森田さんは、学校と保護者、女子生徒が率直に話し合う場を提案。森田さんのアドバイスで学校が対応の遅れを謝罪し、女子生徒も悪口を言っていたことを保護者に伝えると、それまで教職員の処分や相手生徒の停学を求めていた態度が軟化した。学校は、安心して学校へ戻れるよう目を離さないことなどを約束し、翌日から女子生徒は教室に入れるようになった。
問題の長期化 背景に双方の「誤解」も
いじめを巡って多いと感じるのが、学校側と保護者側が互いに誤解していたり、わが子のいじめ被害にショックを受けた保護者に学校側の取り組みが届かず、問題が長期化するケースだ。森田さんは保護者の怒りを解き、両者に何が子どもにとって最善か考えさせ、解決へ導いてきた。
「こじれてしまうと当事者だけで解決するのは至難の業だ。中立の立場で介入できる第三者機関を、政府が2023年度の発足を表明しているこども庁に設置してはどうか」と森田さんは提案。「いじめで苦しんでいる子どもたちは一刻も早い解決を望んでいる。その願いがかなう体制をつくってほしい」と訴える。
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