「運動」から「共感」へ 朝鮮学校への支援が、草の根交流で広がっている〈埼玉朝鮮初中級学校の60年・下〉

前田朋子 (2021年12月24日付 東京新聞朝刊)
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抱えきれないサツマイモを掘り出し笑顔の子どもたち=さいたま市見沼区の「見沼田んぼ福祉農園」で

地域の福祉農園で、保護者も一緒に活動

 「オルチ(やった)!」「大きいよ!見て!」

 11月下旬の暖かな朝。埼玉朝鮮初中級学校(さいたま市大宮区)の幼稚部(幼稚園)の子どもたちと関係者約50人が、同市見沼区の「見沼田んぼ福祉農園」で芋掘りを楽しんだ。日本語と朝鮮語が入り交じる中、見沼田んぼの歴史について説明を受け、子どもたちは地域への愛着を育んでいく。

 農園は周辺の福祉団体などでつくる協議会が運営している。その一つ、知的障害のある人らと農園活動をするNPO法人「のらんど」代表理事で、明治学院大教養教育センター教授の猪瀬浩平さん(43)が仲介する形で、学校も協議会の一員に。子どもだけでなく保護者も農園活動やバーベキューなどを楽しんでいる。

 猪瀬さんは「誰もが共に生きる埼玉県を目指し、埼玉朝鮮学校への補助金支給を求める有志の会(有志の会)」の共同代表でもあり、4年前から学校支援に関わっていた。有志の会は中心メンバーに有識者が多く、法的な根拠に基づいて県の補助金不支給の問題点をホームページ上で解説するなど、理論的な運動を展開している。

人気の「埼愛キムチ」販売 学校見学も

 ただ、猪瀬さんの子どもたちはそうした運動とは別に、農園活動で朝鮮学校の子どもたちと仲良くなった。保護者同士も含む「草の根」レベルの交流は年々深まり、猪瀬さんは「地域の中で他者と一緒に生きる折り合いをつけていくことが社会の成熟だ」と指摘。時間はかかっても、互いの背景を尊重し合える地域社会になれば「さまざまな面で生きやすくなる」と話し、地域の未来に希望を抱く。

 埼玉県からの補助金がない分を穴埋めしようと、学校が講じる策からも交流が広がる。一つは「埼愛キムチ」の頒布会だ。保護者らが吟味し、大阪の業者から取り寄せたキムチを小分けして2カ月に1度学校で販売。利益を学校に寄付している。昨年度の純利益は約45万円。SNSなどで「本当においしい」と評判が広まり、駐車場に車列ができた。初めて訪れた人には学校見学を勧める。

 学校のグラウンドに人工芝を敷き、地域のサッカークラブなどに貸し出す計画も進行中だ。賃料による財政基盤の強化も重要だが、地域貢献やサッカーを通じた交流も目指す。整備資金の一部はクラウドファンディングで募り、12月上旬に目標の300万円に達した。「地元の方が気軽に立ち寄れるホットスポットになれば、未来は大きく変わる」と期待は膨らむ。

障害者も朝鮮人も…「混ぜていきたい」

 朝鮮学校を支える取り組みは、かつては勉強会を開いて「支援すべきだ」と訴えるなど、啓発的な運動が中心だったが、「交流による共感」に変わりつつある。鄭勇銖(チョンヨンス)校長(50)は「足取りはゆっくりだが、交流が深まってうれしい」と話す。

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子どもたちと学校の未来を語る鄭校長=さいたま市大宮区で

 学校理事の金範重(キンポンジュン)さん(47)は、障害者団体の知人から「同じ地域に住んでいるけれど、障害者は障害者、朝鮮人は朝鮮人で固まっていて、全然交わっていない」と言われたことがある。「そこを混ぜていきたい」と金さん。自分たちの考えや生き方を伝え切れておらず、補助金問題などを巡る主張に身構える日本人が少なくないことは理解している。

 それでも「われわれも一皮むけば人懐っこいんです。うまく接点を増やし、同じ地域に住む仲間を増やせれば」と未来を見据えている。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2021年12月24日

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