給付型奨学金を低所得層から中間層に拡大へ ただし「子ども3人以上の世帯」と「学費の高い理工系」が対象 大学の定員要件は厳格化

榎本哲也 (2022年12月13日付 東京新聞朝刊)
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返済不要の奨学金が給付される修学支援制度の高校用政府広報ポスター

 大学や専門学校など高等教育機関の修学支援の在り方を検討していた文部科学省の有識者会議は12日、これまで低所得層に限っていた返済不要の給付型奨学金の支給先を、条件付きで中間層へと広げる見直し案をまとめた。文科省は2024年度の制度開始を目指し、新たな所得基準など詳細な制度づくりに入る。 

「年収380万円未満」が対象だったが

 現在の給付型奨学金は、年間で最大約91万円が受け取れる。授業料も最大で年間に約70万円が減免されるが、家族構成が両親、本人、中学生の4人世帯の場合、おおむね年収380万円未満の世帯であることが条件だった。

 中間層にも給付型奨学金を支給する見直し案の対象は、扶養する子どもが3人以上いる「多子世帯」と、学費の高い理工・農学系の学生。今後、国公立よりも学費が相対的に高い私立の大学などを優先し、対象となる学部や学科などのリストを作成する。

3年連続定員8割未満なら対象外

 一方で、支給対象となる大学などの要件は厳しくなる。現在も学生数が3年続けて定員の8割未満で、かつ経常収支が赤字など経営状況を示す数値も悪い大学などは、制度の対象外としているが、見直し案では、3年続けて定員の8割未満の大学は、経営の数値が良くても制度の対象から外れ、入学する学生は給付を受けられなくなる。ただし、就職・進学率が9割超の大学は猶予するなど、例外を設ける。

 また、経常収支が赤字など経営状態が悪ければ、定員を満たしていても対象外となる。

地方の小規模私立大は対象外に? 定員要件で懸念「自宅から通える大学がなくなってしまう」

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市民団体の会見で、奨学金を借りて私大に進学した体験を話す25歳の女性。当時は給付型奨学金の制度がなく、卒業後に返済が続く=今年9月、東京・霞が関で

文科省「経営的に問題ある大学は…」

 返済不要の奨学金の支給対象とする大学の「定員要件」を厳しくする制度見直し案には、学生の支援団体から「地方の若者たちの選択肢が狭まる」と懸念の声が上がっている。少子化による人口減が進む地方都市では、学生集めに苦労する大学が増えているためだ。

 学生数が定員の8割を3年続けて割り続けた大学は経営状態を示す数値が良くても対象外とする要件について、文科省高等教育修学支援室の担当者は「学生保護が目的。経営的に問題がある大学へ学生を誘導しないようにするため」と説明した。

そもそも高等教育の予算が少なすぎる 

 在学中に閉校などが決まれば、学生生活や就職活動に悪影響が出るからだというが、現状では学生数が定数を満たせない大学は、地方の小規模私立が大半だ。有識者会議の委員を務めた日本若者協議会代表理事、室橋祐貴さん(33)は「ただでさえ地域に少ない大学が奨学金の対象外になれば自宅から通える大学がなくなってしまう。一人暮らしとなれば生活費もかかってしまう。これでは、制度の趣旨に反する」と訴える。

 見直し案には「定員要件」が適切かどうか今後の推移を踏まえて検討していくのが望ましい、との意見が添えられた。室橋さんは「そもそも日本は、高等教育の予算が少な過ぎる。そこをもっと議論してほしい」と話した。

修学支援制度とは

 低所得世帯の子どもが大学や専門学校などの高等教育機関に進学するのを後押しするため、入学金と授業料の減免と、返済不要の給付型奨学金の支給をセットで実施する国の制度。住民税非課税世帯か、それに準じる世帯が対象で、世帯年収の増加に応じて支援金額は段階的に減る。2021年度は前年度より約4万8000人多い約31万9000人が利用した。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2022年12月13日

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  • 匿名 says:

    子供に借金(奨学金)させたくない。親・自分自身の懐事情で進学をあきらめた。。
    Fランには、支援するなとか。私達の時代は…の話はもぅいいよ。
    いま、国は子供達に「学び日本の未来を担う学生を応援します。」っていってるんだから
    子供達に応援してあげてほしい。大学生だけじゃないんだよ。専門学校等も支援するんだよ。
    留学生に多額の支援してるべきじゃないんだよ。日本国民の将来の子供達にも応援するべき。

     女性 40代
  • 匿名 says:

    奨学金はカンパでもなけりゃ100%善意でもないってきちんと教えた方がいいですよ。
    本当に大学行きたかったら大人になってからだって、手段はある。

  • 私も借りてた says:

    きつい様ですが、借りる前に元が取れるかの考えが足りないのではないでしょうか?
    奨学金等のチャンスを与えるのは必要ですが、格差があるからこそ自分の子の為に頑張って働けます。

    私も借りてた 女性 50代

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