5度も効果が!「断熱」校舎は夏は涼しく冬は暖かい 埼玉の小学校と専門家が連携して改修工事

出田阿生 (2022年12月20日付 東京新聞朝刊)

今夏開かれたワークショップ。いったん天井板をはがして断熱材を入れる=さいたま市で(さいたま断熱改修会議提供)

 夏場はエアコンをかけても室温30度を超える小学校の教室。熱を伝わりにくくする「断熱」の改修工事をしたら、「マイナス5度」の涼しさになった-。さいたま市立芝川小学校(大宮区)で今夏、そんな実験があった。専門家グループ「さいたま断熱改修会議」が、PTAや学校と連携して実現させた。「夏涼しく冬暖かく、省エネにつながる断熱を、埼玉から全国に広げたい」と意気込む。

築50年近い、さいたま市の芝川小

 築50年近いコンクリート校舎の芝川小。底冷えのする廊下を歩き教室に入ると、何だかちょっとあったかい…? それが断熱改修をした4年1組の教室だった。夏だけではなく、冬も効果が出ているようだ。

 この教室は最上階の南端にあり、屋上や窓から熱が直に伝わる。以前は「エアコンの冷風で上半身は冷たく、下半身は暑い。風が来ない席は汗だくになるような過酷な環境」(笈川美奈子教頭)だったという。そんな話を聞きつけたのが、さいたま市の官民連携コーディネーター宮本恭嗣さん(48)だった。宮本さんは県内の設計事務所や工務店など20社でつくる「さいたま断熱改修会議」のメンバーに相談。PTAや学校、さいたま市教育委員会とも連携し、昨年プロジェクトが始まった。

壁に断熱材を入れる作業をする子どもたち(さいたま断熱改修会議提供)

天井や壁に断熱材、窓に反射パネル

 今夏、保護者や子どもも参加して改修工事を行った。天井板や壁をはがして断熱材を入れ、梁(はり)も断熱材で覆った。窓には太陽光を反射させるパネルを設置した。大半の材料はメンバーの企業が無償で提供した。不足の費用はPTAのOBらでつくる「芝川小おやじの会」が協力し、クラウドファンディングで募った。

 「改修後は室温が5~6度下がった」と会議メンバーの建築士山本浩二さん(46)。子どもからも「涼しくなった」と喜ばれた。実際の効果を検証するため、現在も東京大の前真之准教授(建築学)が教室に機器を設置し、計測を続けている。

「木の香りにつつまれて気持ちいい」

 室温とともに好評だったのは、黒板側の壁に張った埼玉県内産の木材。これも無償提供を受けた。児童は「自然のかんじがして、じゅぎょうにとてもしゅうちゅうできる」「木の香りにつつまれて気持ちいい」などの感想を寄せた。

黒板側の壁に断熱材を入れた後、表面に国産木材を張った。木の香りに子どもの評判も上々(さいたま断熱改修会議提供)

 さいたま市内には小学校が104校あるが、芝川小の竹谷浩一校長は「校長会でも問い合わせがある」と話す。前出の山本さんは「学習環境の改善、省エネなど数多くの断熱の長所を知ってほしい。災害時に避難所になる学校の断熱改修は、停電時にも役立つ。地域の工務店が断熱工事を請け負うことで地域経済も回していけたら」と話している。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2022年12月20日

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