小田急が不登校児のためのスクール開設 当事者だった若手運転士2人が企画 鉄道が支えになった経験を生かしたい

原田遼 (2023年6月21日付 東京新聞朝刊)
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オルタナティブスクールを創設した別所尭俊さん(右)と鷲田侑紀さん=新宿駅で(原田遼撮影)

鉄道に特化した学び「AOiスクール」

 鉄道会社の小田急電鉄(東京都新宿区)が9月、不登校の子どもたちの支援に乗り出す。鉄道に特化した学びを提供するオルタナティブスクール「AOi(アオイ)スクール」を神奈川県藤沢市に開設。学生時代に不登校を経験した2人の現役運転士が発案した試みで、本業のかたわら講師も務める。

週1回3時間 善行駅のそばで

 小田急直営となるスクールは、江ノ島線善行駅隣接の商業施設内にできる。小学4年~中学3年生が対象で、神奈川県や東京都内の沿線居住者などを想定。児童生徒が自ら、車両の仕組みや鉄道会社の仕事など学びたいテーマを決め、講師が教材や経験をまじえて教える。週1回3時間のコースで、料金は月8000円だ。

NPOの活動に参加し、不登校の子どもと話す鷲田侑紀さん(左)=神奈川県藤沢市で(小田急電鉄提供)

 オルタナティブスクールは従来の枠組みにとらわれない学習を提供する場。認可外だが、子どもが在籍する学校が認めれば、出席扱いになる。試験運用の初年度は来年8月までで、その後に事業の方向性を定める。

鉄道を通して社会につながった

 この事業を提案し、講師も務めるのは別所尭俊(たかとし)さん(27)と鷲田侑紀(ゆうき)さん(27)。いずれも2017年に入社した若手社員だ。

 別所さんは都内の中学で不登校になり、その間、趣味の鉄道に没頭。時刻表を読み込んだり、旅に出かけたりした。「旅をするにもお金や時間の使い方などさまざまなことを考え、将来の学びになった」と振り返る。

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別所尭俊さん(小田急電鉄提供)

 鷲田さんは都内の高校で不登校を経験した際、小田急線沿線を巡るうちに運転士の仕事や混雑状況が自然と頭に入った。「結果的に、入社した時には同期たちと比べて圧倒的に知識があった」と話す。

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鷲田侑紀さん(小田急電鉄提供)

 鉄道を通じて社会とのつながりを持ち続けた2人は鉄道会社にたどり着き、同期として出会った。不登校の経験を基に、2021年の社内事業公募でスクール設立を共同提案し、採択された。

教材の資金のためクラファン

 2人は現在、運営や子どもとの接し方を知るため、運転士の仕事に入りながらもフリースクールや関連のNPOに出向いて、勉強の日々も送っている。別所さんは「車両であれば、物理や電気、駅であれば街づくりに関わる。グループ会社には飲食や小売り、流通の部門もある。鉄道をきっかけに子どもの興味を広げたい」と意気込む。

 事業は社内で予算化されているが、市民にも身近な問題として考えてほしいという思いを込め、教材の資金をクラウドファンディングの専用サイト「READYFOR」で募っている。目標額は200万円。7月には、スクール参加希望者向けの説明会を開く。

オルタナティブスクールとは

 一般的に公教育外で、子どもに音楽や芸術など特殊性のある学びを提供する民間施設が称する場合が多い。文部科学省は明確に定義していない。不登校の子どもに学びや居場所を提供する「フリースクール」と似た形態。同省の2021年度調査によると、小中学校で不登校の児童生徒は約24万5000人。うち3.7%がフリースクールなど民間の施設・団体で相談などを受けている。

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AOiスクールが開設される商業施設「小田急マルシェ善行1」(小田急電鉄提供)

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2023年6月21日

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