月曜の朝、学校に行けない子に居場所を 詩人の向坂くじらさんが桶川の国語塾「ことぱ舎」を無料開放

出田阿生 (2023年4月13日付 東京新聞朝刊)
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たくさんの本に囲まれた国語塾「ことぱ舎」の教室と詩人の向坂くじらさん=桶川市で

 学校に行けない子どものために平日昼間に立ち寄れる居場所をつくりたいー。埼玉県桶川市の自宅で国語塾を主宰する詩人の向坂くじらさん(28)が今春、毎週月曜の午前中、教室を無料開放する試みを始めた。春休み明けや週初めは学校に行きにくくなる子も少なくないが、子どもが1人でいられる場所は少ない。向坂さんは「気軽に遊びに来てほしい。実際に来なくても、こんなところもあるなと頭の片隅に置いてもらえたら」と願っている。

子どもの本や図鑑、詩集や小説もあるよ

 向坂さんは市内にある一軒家の一室で「ことぱ舎」という塾を開いている。小学生から大学受験生まで、国語を専門にした少人数制の学習塾だ。壁には子どもの本や図鑑だけでなく、詩集、小説や随筆などさまざまな本が並ぶ。白い紙もたくさん用意してある。

 無料開放は「学校に行く時間に家を出てすぐ来られるように」、午前8時から午後12時半まで。小学3年から高校生が対象だ。「ゆっくり過ごすことができる場所にしたい。本を読んでも読まなくても、何かを書いても書かなくてもいい」と向坂さん。

自身も高校時代の2カ月、教室に行けず

 発案のきっかけは「昨年1年間で自殺した児童生徒の数が過去最多の500人超え」というニュースを読んだこと。自死が月曜に増えることも知った。高校生だったころの夏休み明け、交友関係の悩みで2カ月ほど教室に行けなかった記憶がよみがえった。「家は出なきゃいけないけど、学校には行きたくないんです。定期券で循環バスに乗り、ひたすらぐるぐる回っていたこともあった」。平日は、なぜ学校に行かないのかと周囲の視線に問われるようで気が重かった。

 「月曜の午前中だけでも居場所があれば」と思った。ただ教室はさほど広くなく、大勢と交流する場には向いていない。フリースクールを運営する人に相談すると「いろいろな性質の場所があって、選べることが大事なのでは」と言われた。「あ、なるほど、と思って。『学校に行かないの』と質問されずに、静かに過ごせる場所にしたい。友達をつくらなくてもいい。一人でいることが許される一時避難所も必要かな、と」

一人で静かに過ごせる「一時避難場所」

 学校復帰を目的にしない、学校が苦手な子どもの地域での居場所づくりを進める「街のとまり木」というプロジェクトの審査に合格。全国300カ所以上ある「子どもの居場所」の一つとして登録を済ませた。

 所在地を利用者に連絡する必要があるため、最初に利用する時だけ事前申し込みが必要。「街のとまり木」ウェブサイトの「ことぱ舎」のページからLINEで問い合わせるか、メール( kujira.sakisaka@gmail.com )へ。

【関連記事】向坂くじらさんインタビュー「先輩VOICE」(外部サイト「東京新聞 STAND UP STUDENTS」に移動します)

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2023年4月13日

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