給食の食物アレルギー対策の現状は? 学校・教委・医師会の情報共有に課題、死亡事故があった調布市は専門員設置

(2023年7月12日付 東京新聞朝刊)
 学校給食の食物アレルギー対策などに関する約10年ぶりの全国調査の結果が今春、公表された。食物アレルギーがある子どもは増える一方、重篤な事故を防ぐために必要な学校と教育委員会、地元医師会などの連携が不十分な市区町村はいまだ多い。専門家は「学校任せにせず、自治体が責任を持って子どもの安全を守るべきだ」と指摘する。

クルミなど木の実類のアレルギーが増加

 調査は昨年10~12月、国の補助金を受けて日本学校保健会が、全国の公立学校や教育委員会を対象に行った。東京都調布市立小学校で2012年12月、乳製品にアレルギーがある5年生の女子児童に誤ってチーズ入りチヂミが提供され、アナフィラキシーショックで亡くなる事故が発生。これを受け、翌2013年に調査が実施されて以降、今回は約10年ぶりとなる。

 食物アレルギーのある小中高校生は13年調査で4.5%だったが、今回6.3%に増え、約52万人に上ることが判明。アナフィラキシーを経験した子も0.48%から0.62%に増え、約5万人となった。

 調査に携わった国立病院機構相模原病院の海老沢元宏臨床研究センター長は「クルミやカシューナッツなど木の実類のアレルギーが増えており、給食で初めて口にするケースもあり注意が必要だ」と話す。

4割の教委は指導表の記載内容把握せず

 どんな食物にアレルギーがあるかや、血液検査など診断の根拠、学校生活での留意点などを医師が記入する「学校生活管理指導表」について、保護者からの提出を必須としている小学校は81.3%、中学校では72.3%だった。しかし、指導表の記載内容を把握していない教委が4割近くあり、学校現場との情報共有に課題が浮かんだ。

表 学校生活管理指導表を教育委員会が把握しているか

 「記入内容が不十分で、学校が対応に困るケースも多い」と海老沢さん。食物アレルギーは何をどのくらい食べると、どの程度の症状が出るかなど個人差が大きい。正確に把握することが大切だが、アレルギーの詳細が分かりにくい指導表もあるという。学校側が医師に直接確認するのは難しく、教委が地元医師会を通じて働きかけるのが有効だが、取り組んでいる教委は8%にとどまった。

 「アレルギー専用調理室や専用調理コーナーがない」(48.9%)、「人員配置や役割分担がされていない」(30%)など、設備や人員が不十分だと課題を訴える回答も目立った。海老沢さんは「自治体が必要な予算化などを進めるべきだ」と指摘する。

調布市は教委に「食物アレルギー専門員」 医師と連携

図解 調布市の取り組み

緊急電話のホットラインも

 2012年に児童の死亡事故があった調布市では、市教委に食物アレルギー専門員として管理栄養士を配置している。児童・生徒や保護者から学校に提出された「学校生活管理指導表」などはすべてこの職員が目を通し、疑問や対応に迷うケースは市医師会に相談する。

 アレルギーの詳細を把握するため、記載内容について、医師会の専門医を通じて確認や改善を求めることも過去にはあった。「専門医に相談できる体制があり、心強い」と専門員の松村亜矢子さん。緊急時、学校や保育所の教職員が直接、東京慈恵会医科大第三病院(東京都狛江市)の医師に電話相談できるホットラインもある。

除去食専用の調理室を整備

 調布市教委は、アレルギー物質を取り除いた除去食専用の調理室も計画的に整備し、昨年度までに市立小学校20校のうち9校に設置。全校統一の指針に沿って、アレルギーのある児童と他の児童とで配膳トレーの色を分けるなどの対策を講じるほか、年2回、各校で教職員がエピペンを投与するシミュレーション研修も実施している。

 調布市教委学務課の土谷喜美子さんは「日ごろから教育委員会と学校、地域の医療関係者が十分に連携し、どの学校でも緊急時に適切に対応できるようにしていきたい」と話す。

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