「食費が…」物価高で困窮するひとり親家庭 生活費の借り入れ相談が後を絶たず

並木智子 (2023年11月28日付 東京新聞朝刊に一部加筆)
 物価高が続く中、生活資金などの借り入れを望む人からの相談件数が、新型コロナ流行下で増加したまま高止まりしている。生活基盤が不安定なひとり親家庭や非正規労働者らは、社会や経済の急激な変化の影響を受けやすく、困窮する様子が浮かび上がる。

お金のイメージ写真

手取りは16万円 修学旅行代も…

 家賃などの支払いに困っている人らの相談や融資を担う「一般社団法人生活サポート基金」(東京都新宿区)への相談件数は、2022年度に1285件と、2019年度の2.8倍に増えた。2023年度も9月までで537件とコロナ禍前より高い水準が続く。目的別では、最近は学費が顕著といい、久保田修三代表理事は「物価高で生活が圧迫されていると感じる」と話す。

グラフ 生活サポート基金事業の相談件数

 「私が働けなくなったらと思うと不安しかない」。東京都内で中学3年の息子と暮らす介護職の女性(33)は打ち明ける。コロナ禍だった2021年に離婚し、生活資金として、支援団体から約20万円を借り入れた。今春には6万円の息子の修学旅行代を追加で借り、月5000円を返済している。

 パート勤務で、手取りは月16万円ほど。ひとり親で児童扶養手当などもあるが、物価が上がり「食費がかなりかかる。貯金する余裕はない」と話す。塾代など教育費も重くのしかかり「体が疲れたなと思っても生活のために(仕事の)シフトは減らせない」。政府は所得減税などの経済対策を打ち出すが「減税されても別のところで上がるだろうし」と不信感をにじませる。

市民団体「児童扶養手当の拡充を」

 金融広報中央委員会が全国5000世帯(2人以上の世帯)を対象にした「家計の金融行動に関する世論調査」では、借り入れの目的(複数回答)で「日常の生活資金」が2022年は20.3%と、「住宅の取得または増改築などの資金」に次ぐ高さだった。生活資金などを貸し付ける国の「生活福祉資金貸付制度」で、コロナ禍での特例貸付(2020年3月~2022年9月)は、2年半で382万3000件、1兆4431億円に上る。

 ひとり親家庭を支援する「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」によると、借入金の返済が困難になるケースも。理事の小森雅子さんは「ぎりぎりの生活で、体調を崩すなどすると生活が回らなくなる」と話す。ひとり親らを対象にした児童扶養手当は所得制限などが厳しく「時給が上がったことで手当がなくなる人もいる」といい、所得制限の引き上げや支給増額を求める。

 大和総研の中村華奈子氏は「所得の低い層は、消費全体の中で、物価上昇が大きい食料などの占める割合が大きく、物価高の影響を受けやすい。全体でも値上げ疲れが出ている中、よりつらい状況が続いている」と指摘した。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2023年11月28日

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  • 匿名 says:

    記事のような事例の場合、役所に申請すれば、修学旅行費、校外学習費、給食費さらに、年数回にわけての学用品代等の支援が受けられるのではないでしょうか。個別におすすめする事はできないとおもうので、役所や教育委員会が制度の周知をしっかり行って、申請しやすくして欲しいと思います。

    匿名

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