地域ぐるみで子どもを育む「寺子屋」川崎市で増えてます 勉強も遊びものびのび 「先生」になる市民も充実感

竹谷直子 (2024年2月6日付 東京新聞朝刊)
 川崎市教育委員会が小中学生の学習支援や世代間交流を目的とする「寺子屋」事業に取り組んでいる。学校外の居場所として10年前に始まり、現在は市内90カ所を超えるまで広がった。農業やスポーツなど独自の体験活動をするところもあり、地域ぐるみで子どもを育む場になっている。
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将棋で遊ぶ子どもたちと寺子屋の先生=川崎市川崎区で

努力が認められる経験を

 「先生、できたよ、見てみて!」

 2月15日の放課後、市立さくら小学校(川崎区)の家庭科室で開かれた寺子屋には、教材を持って集まった子どもたちの元気な声が響いた。

 さくら小の寺子屋「寺子屋さくらッ子」は、2022年12月に始まった。市民らでつくる「さくらもと地域教育会議」が運営。「一人一人の子どもが寺子屋で子ども時代を謳歌してほしい」との思いで、9人のメンバーが先生として参加している。

 代表の髙野詔次さん(80)は「楽しいことをして息抜きができれば。子どもたちは結果だけを求められがちだが努力が大切。努力が認められる経験を増やしてあげたい」と話す。

「先生がみんな優しい」

 さくらッ子は、1時間程度の開催時間のうち30分ほど勉強し、残りは遊びの時間としている。漢字ドリルなどに取り組んだ後、子どもたちは紙飛行機を飛ばしたり、折り紙を折ったり。将棋にチャレンジする子もいた。

 3年生の桑澤朱莉さん(9)は「先生がみんな優しい。勉強も教えてくれて音読も聞いてくれる。寺子屋に来て計算も速くなった」。同じく3年生の宮下凜花さん(9)も「先生が勉強を教えてくれるからうれしい。割り算ができるようになった。お絵かきもできる」と喜んでいた。

 髙野さんは、「子どもたちに信頼してもらい、心と心が握手できるような関係をつくってステップアップしていきたい」と話した。

「先生」養成講座を開催

 2014年度に始まった寺子屋事業は、NPO法人やPTAを通じてできた地域のグループなどが実施団体となり、小・中学校や特別支援学校などが開催場所になっている。協力企業も宇宙航空研究開発機構(JAXA)など60団体以上にまで増え、企業の協力で工作体験をしたり、地元のダンスチームに踊りを習ったりと、それぞれの寺子屋が独自の活動を展開している。

 川崎市教委は先生役として関わりたいという大人のため、寺子屋の意義や最近の学校事情などを学ぶ養成講座を定期的に開いている。さくらッ子のメンバー松田道世さん(75)も講座を受講してメンバーに加わった。「燃料電池関係の仕事をしてきたが定年後時間ができ、その経験を子どもたちに教えることができればと思った。地域のイベントでも子どもが『先生』と呼びかけてくれたりする」とやりがいを話す。

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