子ども向けラグビースクールが人気 W杯が追い風に 接触禁止「タグラグビー」で小さな子も安全に

平井一敏 ( 2020年1月9日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる
 昨秋のラグビー・ワールドカップ(W杯)で初の8強入りを果たした日本代表の活躍が追い風となり、各地の子ども向けラグビースクールで入部希望者が急増している。ただ、常に体を激しくぶつけ合うラグビーは、けがが多いスポーツの代表格。起こりうる事故への理解を深め、安全に楽しめる技術や体力を身に付けたい。
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タグラグビーを練習する子どもたち=愛知県豊田市のトヨタスポーツセンターで

50人以上増加「これほど殺到するのは初めて」  

 「トライ!」。ボールを追う子どもたちの元気な声がグラウンドに響く。W杯の日本対サモア戦が行われた愛知県豊田市で、1977年から活動する豊田ラグビースクール。元トヨタ自動車ラグビー部員らの指導で、4歳から中学生まで男女約170人が週1回、年代別に練習している。

 会員数はW杯が始まった昨年9月以降、50人以上増加。30年ほど前から指導する校長の水野博之さん(63)は「これほど殺到するのは初めて」と喜ぶ。

小3からの「ミニラグビー」もけが防止を重視

 最も増えたのは、幼児を含む小学2年生(8歳)以下。取り組むのは、安全面を重視した「タグラグビー」だ。ラグビーボールを使った鬼ごっこのようで、タックルやスクラムなどの接触プレーは禁止。水野さんは「楽しくボールに慣れ親しめ、パスや相手を抜く技術を学べる」と話す。

 先月中旬に6歳と4歳の息子2人を練習体験に連れてきた同県春日井市の小森佳苗さん(33)は「これなら安心」と笑顔を見せる。

 小学3年からは接触プレーもある「ミニラグビー」などに移行するが、中学までは人数や時間が本来のラグビーより少ない。肩から胸でタックルしたり、倒れるときはあごを引き受け身を取ったりして、けがを防ぐ練習に重きが置かれる。

重傷事故はタックル時に 脳振とう予防が大切

 以前は幼児もミニラグビーだった。だが、強豪国も含め、世界の多くが安全対策としてタグラグビーを導入しており、日本ラグビー協会も2018年に8歳以下の競技規則を変更した。

 背景には事故の多発がある。同協会によると、死亡や四肢まひを伴う脊髄損傷などの「重症傷害」は昨年度20件(死亡1件)で2011年度以降、15~25件(同0~3件)で推移。安全対策を強化しており、理事の渡辺一郎・東京都市大教授(62)は「子どもたちが安全に楽しめる環境を整えることが日本ラグビーの発展につながる」と話す。

 重視するのは「脳振とう」の予防。渡辺さんによると、重傷事故の8割以上はタックル時に起き、頭を強打して脳振とうを起こすことが多い。かつては顔に水をかけて意識を回復させる場面もあったが、2週間は安静にしないと記憶や注意力が低下するなどの障害が残ることが分かってきた。

 渡辺さんは「幼児は頭蓋骨が柔らかく、衝撃のダメージが大きい。接触プレーをさせないことが最善」。

体幹を鍛え、中学からは筋力トレーニングも

 一方で将来に備え、脳振とうを起こしにくい体づくりを呼び掛ける。とっさに受け身などができるように幼いころから、体の動きを支える体幹を鍛え、筋肉が付きやすくなる中学生くらいから筋力トレーニングにも励む。

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 寝る前に軽く腕立て伏せと腹筋を50回ずつすると効果的。牛乳をコップ1杯飲んで寝れば、成長ホルモンが出て骨と筋肉が丈夫になるという。

 「ラグビーはきつくて痛くて大変。その分、仲間と全力で戦った後の充実感はひとしお」と渡辺さん。「勝ち負けだけでなく、安全なプレーにもこだわってほしい」と話す。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年1月9日

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