リンゴで乳幼児の窒息事故が続発 すりおろしても0歳児で死亡例 離乳食の注意点や万が一の対処法は?

河野紀子 (2023年6月29日付 東京新聞朝刊に一部加筆)
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乳幼児は離乳食でもリンゴがのどに詰まりやすく、注意が必要だ

 先月、乳児が保育園で出された離乳食のリンゴをのどに詰まらせたとされる重大事故が相次いで発覚した。幼い子どもは空気が通る気道が狭く、のみ込んだり吐き出したりする力も弱いため窒息しやすい。リスクが高いことを頭に入れ、離乳食を作る時の注意点や万が一の際の対処法などを学んでおきたい。

乳幼児の気管は、本人の小指くらい

 「のどの奥は食べ物と空気両方の通り道なので、食べた物が気管に入って窒息するリスクは常にある。特に4歳以下の子どもは窒息しやすく、注意が必要だ」。子どもの事故防止に取り組むNPO法人「セーフ・キッズ・ジャパン」理事長で、小児科医の山中龍宏さん(75)は言う。

イラスト のどの構造 のど、喉頭蓋、食道、気管

 山中さんによると、通常はのどを通って食べ物は食道に、空気は気管に入る。食べ物をのみ込む時は通常、突起状の喉頭蓋(がい)が気管の入り口をふさいで誤嚥(ごえん)を防いでいるが、乳幼児ではその機能が未熟だ。3歳児が口を大きく開けた時の直径は約4センチ。一方、乳幼児の気管は本人の小指ほどと細く、直径6~8ミリだ。歯が生えそろう前は特にかむ力が弱い上、気管に入ってしまった食べ物をせきで押し出す反射も弱い。よくかまずに大きいままでのみ込み、誤ってのどの奥や気管に詰まると窒息する。

厚労省のガイドラインでも注意喚起

 消費者庁の発表では2014~2019年の6年間で、食べ物が原因と特定された窒息事故によって、14歳以下の子ども80人が死亡。うち9割近くが4歳以下だ。リンゴを巡っては、今年4月に鹿児島県の保育園で当時6カ月の女児が、すりおろしたリンゴを食べた後に意識不明となり、その後に死亡。5月には愛媛県の保育園でも、8カ月の男児が小さく切ったリンゴを口に入れた後、呼吸が止まり重体となっている。

 厚生労働省が2016年に作成した保育施設などでの事故防止のためのガイドラインでは、リンゴは窒息しやすく、離乳食完了期(1~1歳半)までは加熱して軟らかくして提供することを推奨する。

 「こんにゃくや練り製品など弾力があるもの」「乾いた豆やプチトマトなど球形のもの」「もちや白玉団子など粘着性が高いもの」「ゆで卵や芋など唾液を吸うもの」なども窒息しやすいと例示。奥歯が生えそろっていない場合は、食材の大きさが1センチ程度であっても、うまくすりつぶせずに窒息する恐れがあると警鐘を鳴らす。

すぐに背部叩打法やハイムリック法を

 山中さんによると、乳幼児は5~6分ほど気道がふさがると、呼吸が止まって意識を失い亡くなる恐れがある。顔色が悪いなど異変に気付いたら、すぐに詰まった食べ物を吐き出させることが大切だ。

 では、具体的にどうすればいいのか。乳児の場合は片腕にうつぶせに乗せ、背中の真ん中をもう片方の手で強くたたく(背部叩打(こうだ)法)。1歳以上は、背後から抱きかかえて組んだ両手で腹部を圧迫するハイムリック法も併用できる。

図解 窒息時の異物除去のやり方 乳児の背部叩打法、子どものハイムリック法

 ハイムリック法は内臓を傷める可能性があるので、その後に医療機関を受診しよう。子どもがぐったりして反応がなくなった場合は、心停止の可能性があり、心臓マッサージや人工呼吸といった心肺蘇生が大事になる。

 東京消防庁や日赤などは、一連の手順が分かる動画をネットで公開している。

 山中さんは「動画を見たりして実際にやってみることは大切だ。子どもの窒息事故は、どこでも誰にでも起こるという危機意識を持ってほしい」と話した。

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