企業主導型保育また問題発覚 審査する事業者もずさんに選ばれていた 検討委の評価「48点満点中、21.2点」

(2019年8月11日付 東京新聞朝刊)
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委託先審査で2事業者を採点した評価表

 政府が待機児童対策の目玉として導入した「企業主導型保育事業」で、公益財団法人「児童育成協会」(東京都渋谷区)が助成金の審査や支給などの実務の委託先に選ばれた際、評価検討委員会による採点の平均が、48点満点の21.2点(全体の約44%)だったことが、内閣府への情報公開請求で分かった。新たに評価の高い事業者を公募することなく、内閣府が委託を急いだ実態の一端が浮かんだ。

情報公開請求で委員5人の「採点結果」が開示

 企業主導型保育事業は企業から集めた「事業主拠出金」を原資に、内閣府が保育施設を開設したい事業者へ助成金を支出する。助成金の申請受け付けや審査、決定、支給などの実務は児童育成協会に委託している。

 東京新聞は5月、委託先の審査をした評価検討委員会の資料を情報公開請求した。7月に公開された資料は、事業者名や委員名、評価項目の内容などほとんどが黒塗りだったが、委員5人の採点結果は開示された。

応募6件 4件は対象外、1件は3人から「0点」 

 6事業者から応募があったが、公募要件に適合しなかった4事業者は採点対象から外された。残りの2事業者について、委員5人がそれぞれ、実施計画書や費用の内訳書などを基に、内閣府が設定した6項目で点を付けた。項目内容は不開示のため不明。

 評点は0、2、4、6、8の5段階で、満点は48点。一方の事業者には委員3人が0点を付け、全員の平均は2.4点(全体の5%)だった。

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こんな点数でいいの?内閣府「コメントできない」

 もう一方の事業者は平均21.2点(約44%)だった。最低は14点で最高は28点。この事業者が児童育成協会とみられる。5割に満たない状況で、事業者を選んだ是非について、内閣府の担当者は「コメントできない」と話した。

 企業主導型保育事業では、助成金を狙った詐欺事件や、ずさんな計画で保育所を開けないなどの問題が発覚している。内閣府の有識者検討委は3月、委託先を選定し直すよう提言し、内閣府は今夏にも公募する方針を示している。

基準の最低点数も示されず…評価検討委員「見切り発車のしわ寄せ」

 「国が見切り発車的に進めたしわ寄せ」。企業主導型保育事業の実務委託先の審査をした評価検討委員会の委員の1人は匿名を条件に本紙の取材に応じ、そう指摘した。

 内閣府が委員会に示した審査項目は6つ。他省庁で事業者選定にかかわった経験から、この委員は「少ない」と感じた。必須項目や、委託先に選ばれるために必要な最低点数も示されず、「内閣府は入念に検討する時間がなかったのではと思った」という。

 平均で5割を切る得点で事業者が選ばれたことに、この委員は「心配もあったが、子ども関係の事業で実績もあり、任せられるかと考えた」と振り返る。児童育成協会は1978年設立で、国立総合児童センター「こどもの城」(東京・渋谷、2015年に閉館)の管理・運営などをしていた。

 この委員は「責任を感じる」とした上で、「保育施設には子どもたちがいる。内閣府には、審査体制や保育の質を考えて取り組んでほしい」と求めた。

企業主導型保育事業とは

 主に企業の従業員の子どもが利用する認可外保育施設の整備費や運営費を国が助成する制度。自治体の審査と認可が不要で保育施設の開設期間を短縮でき、認可施設並みの助成を受けられる。企業イメージも向上するとして広がった。今年3月現在で3817施設、定員8万6354人分への助成が決定している。2020年度末までに計11万人分の受け皿を整備する目標で、本年度予算は2016億円。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2019年8月11日

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