保育施設の音を抑える「吸音材」 子どもに優しい快適空間

(2017年2月28日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる
写真 吸音材が設置された天井部分(ドット状の部分)の保育室で遊ぶ子どもたち 東京都練馬区で

吸音材が設置された天井部分(ドット状の部分)の保育室で遊ぶ子どもたち=東京都練馬区で

 子どもが長時間過ごす場としてふさわしい環境にしようと、室内に響く音量を抑える対策をする保育施設が増えてきた。音を吸収する特殊な吸音材を天井や壁の内装に使い、外部の交通騒音や、中で子どもたちが騒ぐ声の響きを和らげる。外部へ漏れる音の対策になるとし、近隣への配慮につながると期待する声もある。

「保育士も大声を出さずに済みます」

 東京都練馬区の住宅街にある2階建ての認可保育所。0歳から6歳の約60人が通う。フローリングの部屋を走り回ったり、積み木で遊んだりする園児らのかたわらで、女性園長は「以前働いていた別の保育所と比べて静か。子どもの甲高い声が響かず、保育士も大声を出さずに済みます」と実感を語った。

 全保育室の天井で、半分~3分の1の面積に、小さな穴を等間隔に開けて吸音性能を持たせた石こうボードを張っている。運営会社「コビーアンドアソシエイツ」(千葉県野田市)が2011年度から、新規開設の保育施設に導入した。広報担当者は「60人規模の保育所で、天井の半分を石こうボードにする費用は数万円程度。全体の建築費を考えれば負担は大きくない」と説明する。

うるさい空間に長時間いるのは、発達面でマイナス

 約20年にわたり保育施設の音を調査してきた埼玉大の志村洋子名誉教授(乳幼児教育学)によると、子どもが遊んだり歌ったりしている室内の音量は、地下鉄車内ほどの80デシベルあり、瞬間的に100デシベルを超えることも。また、最近は土地が確保できないとして、鉄道高架下や幹線道路沿いのビル内に開設される保育施設も増え、外部騒音にもさらされやすくなっている。

 志村名誉教授は「これまで子どもはにぎやかなのが当たり前とされ、保育関係者も騒がしさを気にしなかったが、子どもの聴力や言語習得、情緒の発達を考えると、うるさい空間に長時間置かれることはマイナスだ」と指摘する。

漏れる音が小さくなれば、近隣トラブルも減る

 対策の一つとして採用されているのが吸音材だ。熊本大の川井敬二准教授(建築音響学)の実験で、保育室内の天井に吸音性能のあるポリエステル繊維ボードをつり下げると、ボードのない部屋に比べ音量が平均で5デシベル程度下がった。「少し静かになったと感じる程度だが、声が聞き取りやすくなる。子どもも保育士も大声を出すことが減り、落ち着いた雰囲気になった」と話す。

 2014年から保育所向けに吸音性能のある間仕切りを売り出した「フレーベル館」(東京都文京区)によると「『音の対策に困っていた』という声が予想以上にある」という。主に工場の防音対策を手掛ける「静科(しずか)」(神奈川県厚木市)も、特許を持つ発泡樹脂素材の吸音ボードを発売すると保育施設から問い合わせがあり、新製品も開発している。

 志村名誉教授によると、室内の音対策が進めば、外部へ漏れる音も相対的に小さくなり、近隣とのトラブルの原因を減らすことにつながる。また「そもそも鉄道高架下や幹線道路沿いなど、騒音や振動の発生源近くに子どもが長時間過ごす保育施設を造るべきか、考え直すべきだ」と指摘している。

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