保育士が園児にデコピンや暴言 世田谷区の私立認可保育園「担任が減り、負荷が…」

原田遼、奥野斐 (2023年2月4日付 東京新聞朝刊)
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保育士による園児の虐待があった「ナオミ保育園分園ぶどうの木」=3日、東京都世田谷区で

 東京都世田谷区の私立認可保育園「ナオミ保育園分園ぶどうの木」(定員54人)で保育士2人が昨年4月以降、園児に対する暴言や、額を指ではじく「デコピン」などの不適切な行為を繰り返していたことが、世田谷区と運営法人への取材で分かった。(原田遼)

3~5歳の担任2人 計15の虐待行為

 世田谷区や運営法人「ナオミの会」によると、保育士は20代と30代で、3~5歳の幼児クラスを2人で担任していた。

 園児に対して「いいかげんにしろ」「泣けばなんとかなると思うな」などと暴言を吐いたり、「デコピン」をしたほか、食事の時間にトイレを我慢させる、昼寝の時に寝ようとしない子に対して簡易ベッドを揺すり「もう寝なくていい」と言う、遊戯室から連れ出す時に手を引っ張る、などの行為があった。運営法人は少なくとも計15の行為を虐待と判断した。

昨春から担任が1人減り、1人は新任

 法人の野沢永事務局長は取材に「昨春から担任が1人減った上、1人は新任で負荷がかかっていた。虐待はあってはならないこと。組織体制を見直す」と話した。

 昨年11月、区が保護者からの情報提供を受けて事態が発覚。法人は保護者に謝罪した。虐待を受けた1人の園児は昨年末で退園。保育士の2人は自宅待機となり、1人は1月末で依願退職した。法人は世田谷区と西東京市、東大和市に計6つの保育園を運営している。

虐待・不適切保育アンケート 4割が「しそうになった」

 保育現場で働く人を対象に労働組合「介護・保育ユニオン」(東京都世田谷区)がインターネットで行っているアンケート調査によると、2日までに集まった55件の回答のうち、自身が虐待や不適切保育を「しそうになった」と答えた人が4割に上った。(奥野斐)

グラフ 「介護・保育ユニオン」による保育虐待アンケートの集計

無理やり食べさせる、泣いても放置…

 静岡県裾野市など各地の施設で保育士らによる虐待や不適切保育が発覚したことを受け、アンケートは先月17日に始めた。虐待を見聞きした経験の有無や相談先、その後の対応など36問について尋ねている。

 今月2日時点の集計で、園児への虐待や不適切な保育を見聞きしたことがある人は約9割の49人に上った。園児をたたく、突き飛ばすのほか「無理やり食べさせる」「腕を引っ張る」「怒鳴る」「泣いていても放置する」―などが多かった。

 複数回答で理由を聞くと、「職員が『しつけ』として必要と思っている」「園内で注意されたり改善のための対策が取られたりしないため」「人員が足りずに丁寧な保育を行う余裕がない」が並んだ。

上司や自治体に相談しても改善されず

 自身が、虐待や不適切保育の疑いのある行為をしそうになったことがあるかを聞いた質問では、4割の22人が「ある」と回答。当時の状況について「人手不足でイライラしやすい」「日常的に行われていたため、普通の保育だと思った」といった声が上がった。

 上司や自治体などに相談しても「何も起きなかった」という回答が多く、現場の改善につながっていない状況も浮かんだ。ユニオンの三浦かおりさんは「保育士の声を現場の改善に生かす仕組みが必要」と話している。100件の回答を集めるのが目標。結果は年度内に公表する。アンケートは「介護・保育ユニオン」のウェブサイトから回答できる。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2023年2月4日

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