待機児童「改善」のカラクリ 算入されない”潜在的”6万8000人とは?

(2018年10月7日付 東京新聞朝刊)
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 厚生労働省は先月、4月1日時点の保育の待機児童数が減って10年ぶりに2万人を割ったと発表した。一方で、申し込んだ認可保育施設を利用できないのに待機児童に算入されない「潜在的な待機児童」は約6万8000人いて、依然として2つの数字の乖離(かいり)が大きい。専門家は「育児休業制度と合わせた見直しが必要」と指摘する。
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育休中でも復職意思あれば「待機児童」に

 「育児休業を切り上げて復職する意思があるケースを待機児童に含めるようになったことが最も影響した」。さいたま市は昨年、待機児童がゼロだったが今年は315人。増加数で全国最多だった。

 4月から、厚労省は待機児童の集計に当たって、新しいルールの全面適用を各自治体に求めた。昨年までは4月1日時点で保護者が育児休業中であれば、認可施設に入れなくても待機児童から除外してよかったが、今年からは保護者に復職意思があるかどうかで判断するようになった。

 ただ、意思確認の方法は統一されていない。横浜市は「保護者への意思確認は難しい」として直接聞かず、空きのある園を紹介しても断ったり、「育休を延長したい」「子どもと一緒にいたい」と話すと復職意思なし、と判断している。

「特定の園のみ希望」は待機児童から除外

 新ルールができたのは、待機児童の数字に表れない「潜在的な待機児童」の存在がクローズアップされたからだ。「待機児童」は厚生省(当時)が1995年に集計を始めた当初、認可保育所に申し込んでも入れない子どもたちを指した。その後「自治体がかかわる認可外施設を利用できている」「保護者が育児休業中」など待機児童にカウントしなくてもいい要件が増えた。

 その結果、申込者の半数が認可施設に入れないのに、統計上は待機児童がほぼゼロという自治体も現れた。実態と統計のずれを批判された厚労省は、有識者会議で要件を見直した。

 新ルールで育休での除外は減った一方、「特定の園のみ希望している」という別の要件で除外された人数が増加した。4万1200人で、潜在的な待機児童の約6割を占める。

 東京都千代田区は区内全25施設の「どこでもいい」としない申込者は「特定園希望」。162人を除外し、「待機児童ゼロ」となった。同様に待機児童ゼロの宇都宮市も7カ所まで認可施設を申し込めるが、どこにも入れず、市のあっせん施設を断ると待機児童に計上されない。

「落選狙い」は育休制度のひずみ

 除外要件の見直しの有識者会議で座長を務めた山縣文治関西大教授(子ども家庭福祉)は、潜在的待機児童が減らないのは「育休中での除外が厳しくなった結果、特定園希望だとして除外するようになったことが考えられる」と分析する。

 育休は原則1年だが、子どもが保育所に入れないと2年まで延長できる。この証明を得るため、あえて競争率の高い保育所に申し込んで落選をねらう人が一定数いる。山縣教授は「育休をきちんと取りたい希望をかなえる制度になっていないためだ。育休制度の見直しと一緒に解決していくべきだ」と話している。

5年連続ワーストの世田谷区、地域ごとの需要精査で改善

 厚生労働省が先月公表した4月1日現在の全国の待機児童数は19895人で、昨年より6186人減った。

 昨年まで待機児童数が5年連続最多だった東京都世田谷区は、486人でワースト3位に改善した。区は、待機児童の多いゼロ~2歳児用の施設を増やし、地域ごとの需要を細かく計算して必要度の高いエリアの整備を優先したことが奏功したとする。

 同じ都内でも国分寺市は、昨年の2倍以上に増え202人に。2015、16年と出生数が増えたのに、17年4月の待機児童が前年より10人減ったため「このまま減少に転じると考えた」(市担当者)ため需要を見誤った。来春新設予定の施設を、2園から3園に増やした。

 潜在的な待機児童は67899人。昨年より1325人少ないが、減少幅は待機児童数が24%のところ、潜在的待機は2%にとどまった。

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