大学入試共通テスト、どちらで受ける? コロナの学習遅れで「第2日程」選択可、専門家の見解は

土門哲雄 (2020年6月26日付 東京新聞朝刊)
 新型コロナウイルスの感染拡大による長期休校で、来年1月に初めて行われる大学入学共通テストは、高校3年生が学習の遅れを理由に、2週間遅い「第2日程」を選べることになり、受験生の心は揺れる。コロナ禍の収束が見通せない中、運営側は会場や試験監督の確保、感染防止や第二波対策などに追われる。 
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今年1月に行われた最後の大学入試センター試験。来年の大学入学共通テストは2つの日程で行われる

「私大試験まで時間がなくなる」「第2波がきたら…」 

 「今のところ、第1日程で受けるつもり」。都立高3年の男子生徒(17)=世田谷区=は分散登校で家にいる間も勉強に余念がない。「第2日程だと、志望している私大の試験まで時間がなくなっちゃう」。ただ「志望校によって、どちらで受けるか迷っている人もいるはず」と感じている。

 同じ理由で第1日程を受けたいという都内の私立高3年の男子生徒(18)=文京区=は「第2波が来たら、延期になってしまうかも」と感染状況が気になる様子。「情報が少なくて不安」と漏らす。

受験の専門家「受験生は第1日程のつもりで勉強を」

 「第2日程は、どういう要件で受けられるのか。受験生個人で選べるのか、学校単位になるのか」。駿台教育研究所の石原賢一・進学情報事業部長は、大学入試センターが近く公表する実施要項に注目する。

 第2日程の方が、共通テストの傾向を第1日程の出題を見て知ることができるので有利になるとの見方もある。だが、石原さんは「センター試験でも追試の方が難しい傾向だった。むしろ問題を見ると迷ったり、プレッシャーになったりする」と否定的だ。

 第2日程を選んだ場合、私大の一般選抜までの期間が短くなる。また国公立大志願者は共通テストの自己採点後、志望校に願書を出す。共通テストで思ったように得点できなかった場合、出願校を変更することもある。石原さんは「出願期限まで余裕がない。第2日程を選ぶ受験生は少ないのではないか」とみている。

 ただ共通テストの成績で合否が決まる志望校の場合、第2日程を選べば準備期間が延びる。石原さんは「初めから第2日程のつもりでいたら勉強が間に合わない。受験生は、現時点では第1日程を受けるつもりで準備を進めた方がいい」と助言する。

入試改革の失敗、長期休校…負担強いられる高3生

 入試日程を巡っては、全国高等学校長協会が共通テストだけでなく入試全体を1カ月遅らせるよう求める考えをまとめたが、文部科学省は変更を最小限にとどめた。岡山県立高の50代女性教員は「現場は『授業が終わらない』と不安を持っている」。

 こうした中、大学入試センターは会場確保などを進める。どの程度の受験生が第2日程を選ぶか想定が難しく、事前に意向を調査する必要がある。

 大学入試に詳しい東京大大学院教育学研究科の中村高康教授は「今の高3生は入試改革の失敗や長期休校で例年にない負担を強いられている。大学は受験生のためにやれることを全てやってほしい」と強調。「学習の遅れによって入学の機会が失われることのないよう、文科省も今年は定員超過を大幅に許容し、入学者を増やすことも一つの方策ではないか」としている。

大学入学共通テストとは

 毎年50万人以上が受験する大学入試センター試験の後継。大学入試改革で来年初めて実施するが、英語民間試験、国語・数学の記述式問題導入の2本柱は見送りになった。新型コロナウイルスによる長期休校を受け、予定していた1月16、17日を「第1日程」、例年は病気や事故で本試験を受けられなかった人向けの追試験を「学習の遅れ」が理由でも受けられる「第2日程」として設定した。第2日程は1月30、31日で、浪人生は対象外。体調不良などで第2日程を受けられなかった人向けの追試験は2月13、14日に行われる。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年6月26日

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