もしもの時の防災ポーチ 外出先の災害で一晩過ごせる「命と衛生」グッズを 防災専門家・辻直美さんが解説

長壁綾子 (2020年3月11日付 東京新聞朝刊に一部加筆)
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ポーチは撥水加工された軽い素材がおすすめだ

 東日本大震災から9年。地震や水害などの災害が多発する中、外出先での被災に備える「防災ポーチ」が注目されている。入手できない常備薬や生理用品など、使い慣れた自分にとっての必需品を入れ、もしものときにも、安心して過ごしたい。

コンタクトや生理用品、避難所にないことも

 避難所には、その人に合った常備薬やコンタクトレンズなどはなく、生理用品などは用意されることがあっても限られている。

 防災ポーチは外出時に被災した際、どこでも一晩程度、安全で衛生的に過ごせるだけの必需品を入れておく袋。災害が相次ぐ中、自分で身を守る道具として、防災の専門家らが携行を呼び掛けている。

 看護師で、東日本大震災やニュージーランド地震など国内外の災害現場で活動経験のある辻直美さん(50)=大阪府吹田市=もその1人。自らも薄型のポーチに常備薬や使い捨てのコンタクトなどを入れ、持ち歩いている。

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災害への備えを伝えている辻直美さん

図解 辻直美さんの防災ポーチの中身

持ち歩きに負担にならない大きさと重さで

 辻さんによると、いつものかばんに入れ、持ち歩いても負担にならない程度の大きさと重さにおさめるのがこつで、市販の化粧用ポーチなどを活用するケースが多い。中身がぬれないよう、表面がはっ水加工してあることが必須だという。

 ポーチに入れる必需品とは何か。辻さんは「命に関わるもの」と「衛生的なもの」に分け、2つのポーチを携行する。

 「命に関わるもの」には7日分の常備薬、1日使い切りタイプのコンタクトを2日分など。辻さんは「慣れない場所でストレスを感じ、頭痛になることも。持病がない人も鎮痛剤を入れておくといい」とする。

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命にかかわるものが入っているポーチの中身

 人が密集している避難所は乾燥し、ほこりも立ちやすい。のどあめも役立つ。辻さんは「抗菌作用をうたっているマヌカハニーのキャンディーを気に入っている」。夏場の熱中症対策には塩分タブレット。水に入れて溶かせば、経口補水液の代わりにもなるという。

 辻さんはアロマオイルも持ち歩く。「1滴でもティッシュにつけておいておくと心が安らぎ、癒やし効果もある」

日々使いながら「ローリングストック」を

 「衛生的なもの」では、生理用ナプキンとペットシーツを2枚ずつ入れている。吸水素材なので、レジ袋の中に入れれば簡易トイレや、赤ちゃんのおむつとしても使える。

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トイレなどの衛生面にかかわるものをまとめて

 災害発生から1~2日は特に情報が重要だが、避難所は自宅のように充電はできない。辻さんは「モバイルバッテリーは必ず持ち歩いて」と話す。

 日々使いながらローリングストック(循環備蓄)することも考えよう。辻さんは「まず1日過ごすことを念頭に、自分の命を守るには何が必要かを考えて、ポーチに入れるものを決めてほしい」と話す。

ペットボトルのキャップは万能です 簡易シャワーで子どもの手洗いも

 避難所で配られる水の量は限られている。計画的に使ったり、飲んだりするために、辻さんが活用しているのがペットボトルのキャップだ。

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穴をあけたペットボトルのキャップ

 キャップの上部には、キリなどで10カ所ほど小さな穴を開けてある。水が入ったペットボトルに付け、ボディを押すと水が勢いよく飛び出し、簡易シャワーにもなる。「少量の水で、手を洗ったり、子どもの体を洗ったりできる。子連れ避難の人たちに便利だ」。どんなペットボトルにも合うよう、辻さんは穴あきのキャップを3種類常備する。

 また、配られたペットボトルのキャップも活用。コップ代わりにすることで節水効果が期待できる。水を注ぎ、キャップに口をつけず飲料を口中に入れる。「10秒待つと唾液が分泌され、少量でものどを潤すことができる」

 反対に、ペットボトルに口をつけて飲むと、つい多く飲んでしまいがち。辻さんは「飲み口に細菌が繁殖しやすい」とも話す。

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