子ども服「お下がりの輪」広がる 自治体が回収、無料で配布 台東区、松本市などが取り組み

藤原啓嗣 (2022年11月28日付 東京新聞朝刊)

リユースの子ども服を選ぶ親子=愛知県稲沢市で

 まだ着られる子ども服などを住民から回収し、必要な人に配る-。こうしたリユース(再使用)に、各地の自治体が取り組んでいる。ごみの減量と子育て支援の充実を目指した試みだ。長引く物価高に暮らしが圧迫される今、住んでいる自治体に目を向けてみてはどうだろう。

長袖Tシャツなど 1世帯5点まで配布

 コーデュロイのスカート、デニムのジャケット…。今月中旬、愛知県稲沢市の明治スズラン児童センターを訪ねると、一角に子ども服がずらりと並んでいた。遊びに来た市内の古田俐乃ちゃん(1つ)がチェックのシャツを欲しそうに引っ張る。母親の亜耶さん(30)は「つい先日も長袖のTシャツをもらったばかり。すごく助かる」とほほ笑んだ。

 市は今春から、洗濯済みのベビー服や140センチまでの子ども服、未使用の肌着を児童センターや市環境センターで回収。汚れがひどいものなどを除いて各施設で展示し、必要とする市民らに1日1世帯5点までを無料で配布している。

 この事業を発案した資源対策課主任の野村和正さん(34)によると、乳幼児は成長が早く、一定のサイズの服を着られる時期が限られるため、比較的きれいな状態で残る。また、食べこぼしや外遊びなどで汚れてもいい服を何着も欲しがる親がいるため、リユースになじみやすい。

 これまでに延べ186人が計4325着を持ち込み、417人が1597着を持ち帰った。持ち帰った服を使用後、再び持ち込む人もいる。野村さんは「リサイクルショップで買い取ってもらえなくても、まだ使える服を再利用できる。子育て世代にごみ減量の意識も広まるはず」と話す。

保育園や幼稚園で口コミ 人気高く

 近隣の同県小牧市は十年前から、児童館などの市内8カ所で子ども服や妊婦服を集め、定期的に配布。2019年度は約5000人が子ども服1万6200着以上を持ち帰った。コロナ禍で20、21年度は利用者が減ったが、担当するごみ政策課主事補の岡田康助さん(26)は「既に事業が定着していて人気が高いので、本年度は回復の兆しがある」と言う。

 東京都台東区は昨年11月、環境ふれあい館ひまわりに「子供服のリユースクローゼット」を開設。新生児や160センチ程度までの子ども服、妊婦服を回収し、展示している。必要な人は窓口で無料で受け取ることができ、担当者は「保育園や幼稚園などで口コミで広まっている。無料なのが大きい」と声を弾ませる。

「貧困家庭への支援にも」と専門家

 定期的に配布会を開いている自治体も。長野県松本市は子ども服などを公民館など市内26カ所で回収し、年6回、体育施設「ラーラ松本」や南部体育館で配っている。金沢市は年8回、保育所などで集めた子ども服を戸室リサイクルプラザなどで配布する。

 一方で、回収した服の保管場所や仕分けスタッフの確保といった課題も。また、転売目的などで複数の施設を回って子ども服を集める人もいるとみられ、ある自治体の担当者は「性善説で成り立っている事業なので、最低限のルールは守ってほしい」と呼びかける。

 リユースに詳しい国士舘大の森朋子専任講師(44)(廃棄物工学)は「貧困家庭への支援にもなる」と各自治体の取り組みを評価。「繊維はリサイクルが難しく、製造段階での賃金格差や環境への負担など、さまざまな問題がある。こうしたことを考えるきっかけにもなるといい」と期待する。

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