祖父母世代の言動に傷つく親世代 「良かれと思って」が裏目に〈子育ての世代間ギャップ・上〉
「しっかり見てあげて」が思わぬ展開に
「子どもが小さいうちはしっかり見てあげてね。できるだけ一緒に遊んで過ごすのよ」
四国地方のある自治体が昨夏開いた子育て中の保護者向けの講習会。運営を手伝った70代の女性は、参加者の母親と話す中で、こんな言葉をかけた。
母親へのアドバイスという気持ちだったが、思いがけない展開になった。「とても傷つくことを言われた。来月から仕事に復帰するのに『子どもをしっかり見てあげて』と言われ、小さい子を預けて働くことを批判されているように感じた」。母親が自治体の担当者に苦情を訴えたのだ。
担当者から「今後は気を付けて」と告げられた女性は、復職間近の母親の参加や不安までは思い至らず、「自分の話したことで傷つけてしまった」とショックを受けた。「しばらくこういう場への参加は遠慮したい」と、今も活動を休んでいるという。
行き違い…機嫌を損ねた理由が分からず
「支援の場や家族間で、祖父母世代と子育て世代の気持ちが行き違ってしまったという話は本当によく聞く」。そう話すのは、女性と同じ団体で子育て支援活動をする高知市の山本史(ふみ)さん(69)。
ある知人女性は、息子夫婦と外食をした際、自分はささっと食事を済ませ、幼い孫を抱いて店の外に出た。孫を抱っこしながら食べる息子の妻を見て「いつもはゆっくり食べられないだろうから、今日くらい」と思いやっての行動だった。
その晩、息子からすごいけんまくで電話があり、「今日みたいなことは二度としないでくれ」。知人女性は機嫌を損ねた理由が分からなかったが、息子の妻が「子どもを抱っこしながら3世代でゆっくり食べたかったのに、子どもを奪われた気がしたから」という。孫を挟んで関わりが増える中、コミュニケーション不足で行き違った形だ。
74%が経験あり どんな言動が不適切?
子育てに関する言動は、本人に悪気はなくても、受け取る側が困ったり、つらかったりすることがある―。「東京すくすく」が3~4月、婦人之友社と共同で実施したインターネット上のアンケートでも、こうした実態が浮かんだ。
「(子育てに関して)身近な人の『悪気はない』『良かれと思っている』言動に複雑な気持ちになったことはあるか」との問いに対し、回答者202人(中学生以下の子どもを育てる保護者)のうち、「はい」と答えた人は74.3%に上った。このうち、その言動をした相手の属性を「祖父母世代(実父母、義父母、近所のお年寄りなど)」とした人は64%だった。
寄せられたエピソードを基に、その言動を分析すると、①今の時代に合わない ②行き違い ③価値観の押し付け ④時代と関係なく不適切 ―の4つに分類された=表。
①今の時代に合わない |
・子どもの写真をLINEで送ったり、アイコンにしたりといったネットリテラシーの低さ ・旧来の「らしさ」を要求する「男のだから泣かないの」といった発言 ・断乳の時期は、今はなるべく子どもに任せるという考えが一般的なのに、子どもに「まだ飲んでるの?」と強く言う |
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②行き違い |
・子どもに自分でできる力を付けさせたいのに、あれこれと身の回りの世話を焼く ・頼まなくても家事を手伝いに来て流しにたまった食器を洗う。「家事を済ませられていない」と言われているようで傷つく ・小さいおもちゃを頻繁に与えること。習慣化し、ご褒美がないと行動しない子になりそう |
③価値観の押しつけ |
・「一人っ子はかわいそう。きょうだいがいるといい」 ・仕事から7時過ぎに帰宅して、7時半に夕ご飯を食べさせられただけでもよく頑張ったと思っていたのに、「そんな時間にご飯だなんて子どもがかわいそう」 ・子どもが1、2歳の頃、「保育園に預けてかわいそう」「迎えの時間が遅くてかわいそう」 |
④時代とは関係なく不適切 |
・「ママに怒られるから部屋を片付けなさい」「赤信号を渡るとおまわりさんに捕まるからやめなさい」といった問題の根幹をすり替えるような注意の仕方 |
世代間の考え方の違いや、祖父母自身が持つ価値観の押し付けに抵抗感を抱く子育て世代。祖父母世代にあたる山本さんは、「私たちは良かれと思って言っていることだから、余計に始末が悪いのよね」と悩む。
5月11日に公開予定の(下)では、両者のすれ違いを防ぐヒントを伝えます。
別冊 婦人之友でも紹介しています
東京すくすくのサイトでは、婦人之友社が共同で行った「子育てアンケート」の結果を順次紹介していきます。アンケート結果を伝える記事の一覧ページはこちらです。
5月15日発売の別冊 婦人之友「親も子も『ホッ』とできる居場所、あります」でも、アンケート結果と、子育て世代の声を受け止めてきたすくすく編集チームのこれまでの歩みを取り上げています。
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