物価高と猛暑の夏休み、困窮家庭は乗り切れるのか 食費、エアコン代…NPO調査で6割が「十分な食事を与えられない」

並木智子 (2023年7月17日付 東京新聞朝刊)

写真 泣いている赤ちゃん

 物価高の中、夏休みが近づく。夏休み中は、給食がなくなり、6月に値上げとなった電気の使用量も増えがちで、子育て世帯の負担は増す。子どもたちに十分な食事や、エアコンの使用をさせることができるのか、保護者らに不安が広がっている。

「扇風機で…」「もう節約できない」

 「この夏の暑さが心配。扇風機でなんとか乗り切れたらいいけれど」

 長野県のシングルマザーの女性(43)は不安を漏らす。月収は約10万円で、小学生の子ども3人を育てる。夏休みは学童保育を利用するためお弁当が必要で食費が増す。高学年の長男は自宅で過ごす可能性もあり、電気代も気がかりだ。

 東京都内で小学生の子ども2人と暮らすパート勤務の女性(38)も生活を切り詰める。夫を亡くし遺族年金を受給するが、月2万円以内だった光熱費が、暖房費がかさむ1月は電気代だけで2万円以上に。子どもに新しい服はなかなか買ってあげられず、食事ももっといいものを食べさせてあげたいと思うが、「もう節約できるところはない」と話す。

25%が「身長や体重が増えていない」

 困窮家庭の支援に取り組む認定NPO法人「キッズドア」が、5~6月に1538世帯から回答を得た調査では「夏休みの食事の不安の具体的な内容」(複数回答)として、「子どもに十分な食事を与えられない」との回答が60%に達した。

表 認定NPO法人キッズドアのアンケートに寄せられた声

 昨夏と比べ子どもの成長や生活に悪影響が「大いに出ている」「出ている」との回答も59%に。具体的内容(複数回答)では「必要な栄養がとれていない」が60%、「身長や体重が増えていない」が25%と深刻だ。「お金がまったくなく、借金生活」との声もあった。渡辺由美子理事長は「少子化対策も重要だが、今困窮している子どもたちにも政府は目を向けて」と訴える。

10月以降、光熱費さらに上昇の可能性

 夏休み後には、現在より家計の負担が増えかねない要因も控える。政府が「激変緩和措置」としてとった電気やガスの料金の抑制策が9月を期限としており、10月以降に光熱費が膨らむ可能性があるためだ。

 電気代上昇が食費を圧迫するとの調査結果もある。第一生命経済研究所が5月に公表した調査では、過去8年間の総務省家計調査などを基に、電気料金が上がると家計は節約傾向を強め、生活に余裕があるときに買われやすい乳製品や果物、生鮮魚介を買い控える傾向があった。熊野英生氏は「電気代の値上げは家計の余裕を失わせる」と分析した。

フードバンクや社協が支援しています

 困窮する子育て世帯に食料を届けようと支援に乗り出す団体もある。

 全国フードバンク推進協議会は、今月1日から8月末まで、各地域のフードバンク37団体と協力し食料を寄贈する企業へのさらなる支援を呼びかけている。2021年から夏休みや年末年始に実施しており、今回で5回目。支援を受ける世帯は増加しており、昨冬は延べ2万8565世帯に上った。

 食品は少しずつ増えているというが、担当者は「国内のフードバンクの数自体が足りておらず、十分な支援ができているとは言えない」と話す。

 ほかにも地域の社会福祉協議会などが支援を実施。住んでいる自治体によって異なるが、「地域名(例・千代田区) 社会福祉協議会」などとネットで検索し、地域の協議会に電話などで問い合わせや相談することで受けられる支援もある。

電気代の値上げ

 東京電力エナジーパートナー(東電EP)の規制料金は、昨年の世界的な資源高などで、燃料価格の変動を反映させる「燃料費調整額」が上限に達した。このため、東電など大手電力7社は経済産業省に規制料金の値上げを申請。東電では今年6月から平均15.9%の値上げとなった。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2023年7月17日

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